開戦後18日:イラク戦争の戦況と反戦運動の課題
○「バグダッドの大虐殺」を許すな! 米英は即時無条件に戦争を中止せよ!
○イラクの民衆と兵士をもうこれ以上一方的に大量殺戮するな!
○「飢餓戦術」を取らせるな! 軍民分断に「人道支援」を利用することに反対する!
○大量破壊=非人道兵器:劣化ウラン弾、クラスター爆弾、ナパーム弾、燃料気化爆弾の大量使用を許すな!
○米軍事政権=植民地政権の樹立に非難を集中しよう!
○国連安保理と国連が、そして日本が、「植民地政権」を承認することに反対する!


T

(1)反戦平和運動もいよいよ正念場。バグダッド市街戦始まる。
 私たち反戦運動はいよいよ正念場を迎えた。4月5日、開戦後17日目、ついに米軍の一部がバグダッド中心部に突入した。イラク側の反撃能力を確かめる「威力偵察」であった。とは言えバグダッドの市街戦は事実上なし崩し的に始まったと見ていいだろう。6日にも「威力偵察」が継続された。
 私たちが一番恐れていたバグダッドでの市街戦が開始されたのである。サダム国際空港をめぐる攻防戦を含めて、ここ数日の首都攻略戦だけでイラク側に数千人の死者が出たと報じられた。負傷者を含めるとおそらく数万人の犠牲が出ているのは間違いない。

 兵士に対する一方的殺戮。一般市民に対する無差別殺戮。侵略者たちは勝ち誇ったかのように皆殺しを始めているのだ。バスラでも英軍が市街戦に突入、大虐殺を開始している。装備で太刀打ちできないイラク側はなぶり殺し状態になっている。報道されない地域も含めて、おそらくイラク全土で想像を絶する惨劇が繰り広げられているはずだ。このまま放置すれば、凶暴さを増し単なる殺し屋軍団と化した米英軍は平気で数万人、数十万人を殺しまくるだろう。

 一刻の猶予もない。「虐殺やめろ」、「戦争を即時中止せよ」の声をさらに強めよう!今すぐこの不正義の無法な皆殺し戦争をやめさせよう! 私たちは、これから更に本格化する「バグダッドの大虐殺」を阻止するために最後の最後まで渾身の力を振り絞って闘うだろう。イラクの兵士と民衆の孤立させた闘いにさせてはならない。全世界の反戦平和運動の力で何としても戦争中止に向けた展望を切り開かねばならない。その展望はたとえ小さくても一人一人の奮闘の中からしか見い出せない。

(2)今私たちがなすべき諸課題。
 戦況の展開は予想を超えるスピードで展開している。毎日毎日残略行為がエスカレートしている。反戦平和運動は今差し迫って何をしなければならないのか。私たちに突き付けられた諸課題を取り急ぎ明らかにしたい。

−−まず戦況が突き付ける課題について。私たちのような軍事専門家でもない者がイラク戦争の戦況を予測するのは非常に難しい。しかしここ数日で戦況は一気に最終局面に入った。大局での米英軍の圧倒的な優位と大進撃、イラク側の抵抗戦の総崩れ状態はすでに報道されている通りである。「威力偵察」とバグダッド包囲を踏まえて次はどんな局面展開が考えられるのか。イラクの兵士と民衆は一体どんな抵抗をしているのか。こうした戦況を受けて私たちは一体何を暴露し、どうすればいいのか。
 戦況については、3つの付属資料を作成した。併せて検討していただきたい。
@主報告:イラク戦争の現在の戦況について
A翻訳資料:最終攻撃の新しい危険(ニューヨーク・タイムズ)
Bイスラエル型市街戦戦術に関するレポート

−−米英の外交攻勢が突き付ける課題について。米英は侵攻作戦を進めながら、ここへきて一気に政治的にも勝負をかけ外交活動を強めている。「暫定政権」という名の「植民地総督府」、つまりは米の軍事独裁政権樹立とその国連安保理と国連での承認取り付け、「戦後復興」を口実にした“復興特需”、石油利権で安保理各国を抱き込むシナリオである。今回の侵略に反対した独仏露中が米英の「既成事実」になびき始めている。

(3)何よりも現在行われている米英による大量虐殺を糾弾する!
 まだ最終決着は付いていない。私たちの目の前で大量虐殺が繰り広げられているのである。何よりもまず米英の無差別虐殺を糾弾しなければならない。やれ「暫定政権だ」、やれ「戦後復興だ」と、もう決着が付いたかのように、現実の蛮行から目をそらせる“戦争プロパガンダ”を断固排撃しなければならない。

 牙を剥きだし蛮行を働く米英軍の暴走を今すぐ物理的に止める妙案などない。諦めないこと、屈しないこと、闘いを継続することである。世界中の反戦系リベラル系ウェブサイトを見れば分かるだろう。今も毎日のようにアメリカの各地で、ヨーロッパ各地で、そして中東で、アジアで、ラテンアメリカで、反戦運動が粘り強く展開されている。皆私たちの仲間である。

 私たち全世界の反戦平和運動はもう一度イラク戦争をめぐる国際反戦世論を盛り上げ、戦前に形成された米英孤立という力関係を維持し続けなければならない。そのために必要な諸課題は以下の通りである。署名活動で、タウンウォークで、平和行進で、学習会や集会で、電話やメールやFAXで、米英の蛮行と目論見の非道さ、露骨さ、無法さを暴き糾弾し続けることである。
○「バグダッド大虐殺」の本格化をストップさせること。イラクの民衆と兵士の一方的な大量殺戮をこれ以上させないこと。即時無条件の戦争中止を勝ち取ること。
○「飢餓戦術」を取らせないこと。 軍民分断に「人道支援」を利用することに反対すること。
○大量破壊=非人道兵器:劣化ウラン弾、クラスター爆弾、ナパーム弾、燃料気化爆弾の大量使用を糾弾すること。
○米軍事政権=植民地政権の樹立に非難を集中すること。国連安保理と国連が、そして日本が、「植民地政権」を承認することに反対すること。


U

(1)4月5日のバグダッド突入で戦況は新局面に。
 イラク戦争は、米英軍側がバグダッドに突入したことで、新しい局面に入った。圧倒的戦力格差と圧倒的物量格差、圧倒的な国力の格差からして開戦前から勝負は付いている。問題はその勝負の付き方である。すでに私たちが想像するよりもかなり早くバグダッド攻略戦を始めた。フセイン政権が自壊するかしないか。米英軍側が今後どれだけ苦戦するかしないかである。

(2)米英軍はバグダッド攻略をどう考えているのか。
a)従来型・掃討作戦型の市街戦:現行の過小兵力でやるか、それとも増援部隊を待ってまずはバグダッド包囲網を構築してからやるかは別にして、市街戦を展開しながらフセイン政権中枢部を攻略するやり方。
b)イスラエル型・「ジェニン型」の市街戦:サダム国際空港を完全に制圧し、ここを拠点にして占領地を拡大していくと同時に、軍司令部中枢に空陸から激しい攻撃を加えるやり方。これはイスラエルがパレスチナ自治区の拠点を攻撃・制圧・殲滅する方式である。
c)兵糧責めで戦わずして降伏させるという戦術:少し前に統合参謀本部が述べたようにまずは堅固な包囲態勢を構築し、空爆・砲撃など市内へのあらゆる形態の攻撃を強めながらその包囲態勢を狭めていき軍と市民の降伏を待つやり方もある。これはすでに始まっている食糧危機を激化させるだろう。
※別報告「イラク戦争の現在の戦況について」では「市街戦の2つの型」を紹介したが、それがここで言うa)とb)に当たる。

(3)いずれにしても市街戦はイラク側に甚大な被害をもたらす。
 首都の緊張は極限に達している。偶発的事件、例えば国際世論の動向、あるいはイラク軍防衛隊との戦闘を引き金に、米英側もコントロールできないまま市街戦がなし崩し的にエスカレートしていく可能性が高まりつつある。
 a)b)のように何らかの形で市街戦に入った場合、米軍、イラク軍、民兵、イラク市民や子どもたちを巻き込んだ凄惨な目を覆う虐殺と惨劇が私たちが見ている目の前で繰り広げられるだろう。米軍はイスラエルによる「ジェニンの大虐殺」を手本にして市街戦のやり方を学んだという。ありとあらゆるビル・住宅・構築物を、中に住んでいる住民もろともまるで解体現場のように破壊し尽くし、生き埋めのまま虐殺する残虐非道な殺し方を学んだというのである。
 c)のようにバグダッドが包囲された場合も、兵糧責めにより飢えと餓死、上下水道の打撃と衛生面の悪化と伝染病の蔓延、病死者の続出等々が大問題になるだろう。即死させるか「緩慢な死」を強いるか。

 いずれにしても許し難い歴史に残る大殺戮になる危険がある。これまで経験したことのないような集中した、徹底的な空爆が行われ、住民も含めて大量の犠牲者、負傷者がでて、病院へも送れず、治療も出来ない状況が生じるだろう。

(4)米英による「食料援助」という名の軍民分断の危険。
 米英軍はあらゆる手段を使って、兵士と一般市民とを切り離そうとするだろう。 一方ではイスラエル軍がパレスチナ住民を住宅と居住地一帯から追放したのと同様に、住民狩りを断行するだろう。バグダッド近郊ではすでにこれが始まっている。
 他方ではバグダッドを包囲し人為的な飢餓状態を創出し、「人道支援」「食料援助」を使って兵士をあぶり出すやり方である。現に狡猾な米英当局は、親米派アナン事務総長を囲い込み国連に「人道援助」なるものを出させることに成功した。そしてその“食糧配給権限”を米英軍が牛耳ることとなった。これは何を意味するか。飢えに苦しむバスラやバグダッドの民衆を、ニンジンをエサに都市部の外へ誘き出し、兵士と民兵の丸裸状態になった隙を見て市内に電撃的に突入する戦術である。相当数の愛国的市民が残っているはずである。膨大な犠牲者が出ることは避けられない。
※国民の3分の2に緊急援助必要=イラク、食糧が危機に−WFP(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030403-00000555-jij-int
※「バスラの市民と子どもたちが危機に瀕している」(署名事務局)


V

(1)イラク全土でエスカレートする一層過酷な大規模無差別空爆、地上部隊による無差別攻撃。急増する罪なき市民の犠牲。
 世界の関心がバグダッド攻防戦に向けられている中で、イラク全土で一層過酷な大規模無差別空爆、地上部隊による無差別攻撃が展開されている。当初の「民間人の犠牲は最小限にする」(ラムズフェルド)などという「きれいな戦争」はあっさりかなぐり捨て、市場、病院、住宅密集地、民間施設などを空爆で破壊している。
 これらは「誤爆」と片付けられている。私たちは「誤爆」という言い方を許さない。明らかに病院とわかっている施設に何発も爆弾を浴びせ、患者や子どもを殺す、何の軍事施設もない市場に爆弾をぶち込んで多数の犠牲者を生み出す。これは「誤爆」などではない。目的意識的で組織的な大虐殺である。バグダッドや地方都市は昼と夜を問わず爆撃が繰り返される修羅場と化しつつある。
※「イラク戦争被害の記録」(署名事務局)
※「シューラ市場の住民大量虐殺」(署名事務局)

(2)米英軍は、ありとあらゆる大量破壊兵器・非人道的兵器を使いまくっている。
−−新しい型の「核兵器」である劣化ウラン弾を南部・中部都市部の近郊、バグダッド近郊の人口密集地帯で大量に使っている。私たちの見方が正しければ、対戦車用劣化ウラン弾と比較にならない大量の劣化ウランがバグダッド政権軍事中枢に撃ち込まれている硬化目標貫通弾の形でばらまかれている。湾岸戦争の劣化ウランの影響がいつまでも消えることがあり得ないのと同様、都市部でばらまかれた大量の放射能の影響は戦争後無限に続くことになるだろう。
※「私たちが劣化ウラン戦争に反対する8つの理由」(署名事務局)

−−新型のクラスター爆弾が次々に使われ、兵士や市民が殺されるだけでなく、不発弾が地雷となり、また食料と同じ色で取り違えた子どもの命を奪っている。
※「ナパーム弾・クラスター爆弾 アメリカは非人道兵器の使用を直ちに中止せよ!」(署名事務局)

−−数百メートルの範囲を燃やし尽くす超大型燃料気化爆弾「デージーカッター」が何発も投下されている。小型核兵器の破壊力に次ぐ正真正銘の残虐兵器である。
※「米軍が 大量破壊=非人道兵器“燃料気化爆弾”を使用!」(署名事務局)

−−さらに新兵器「ブラックアウト爆弾」によってバグダッド全域が停電させられた。バスラのように電力、水道などライフラインを破壊することで多数の市民の生命を脅かす行為である。
※バグダッド全域で停電 米英軍が特殊爆弾投下か(共同通信)
 http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0404-469.html

−−これらのほとんどは国連の人権小委員会で大量殺戮兵器・非人道兵器として使用が禁じられている兵器ばかりである。初めから使うつもりで用意していたにせよ、「簡単に片づく」という目算がはずれた米軍にとっては、兵士と住民を震え上がらせ戦意を喪失させるためには、これら非人道兵器を徹底的に使うのが効果的と考えているのである。

(3)サダム国際空港の陥落で米による首都への戦術攻撃が現実のものに。
 バグダッド周辺に集結する米軍は、155oりゅう弾砲や戦車砲などによるバグダッド砲撃を開始した。無差別砲撃は空からだけではなく地上からも開始されている。サダム国際空港にC130が到着したという報道がなされた。空港制圧により武装ヘリによる対地攻撃も可能になるだろう。イラク軍兵士のみならずイラク市民に対するなりふり構わぬ無差別殺戮態勢がここに確立することになる。イラク側の抵抗と反撃が強ければ強いほど怒り狂った米軍は相手の戦意喪失・意気消沈させるために無差別攻撃を強行するだろう。それは本格的な「バグダッドの大虐殺」の始まりに他ならない。

(4)皆殺し状態の中であくまでも侵略軍に抵抗する民衆の反米ナショナリズム。
 すでに陥落した地方都市部では、一部に米英軍に手を振る民衆も散見される。しかしバグダッドを中心に、また陥落した地方都市でも、イラクの兵士と民衆は米英の侵略者に対する憎悪を燃え上がらせている。明らかに反米・反帝民族独立=民族解放のナショナリズムが高揚している。

 ここ数日の戦況の急展開で兵士・市民を問わずどれだけの犠牲者が出たのか全く訳が分からなくなっている。それでもまだバグダッド中心部のイラク軍は抵抗の構えを崩していない。自爆攻撃を含めて途方もなく甚大な被害を伴いながらゲリラ戦を展開している。住民は米英軍を歓迎するどころか、占領軍=侵略軍と見て、抵抗と非協力を貫いている。米軍地上部隊は「周りが皆敵」の状況に陥りつつある。民衆か兵士か分からない状況に陥っている。女性や子どもの乗った一般車両を無差別に銃撃する事件が多発している。住宅地に入り込み、ゲリラ兵士がいないか一軒一軒調べ尽くす極めて危険な「掃討作戦」を強化している。


W

(1)「米軍事政権」のでっち上げと既成事実化の危険。
 ブッシュ政権は国際政治の主導権を握るために、必ずしも市街戦が終了しない段階で、例えば今週中にも「米軍事政権」を樹立するとの方針を内外に示した。フセイン大統領が生きていようと死んでいようと関係なしに、勝手に政権をでっち上げるというのだ。もうメチャクチャである。
 先週から慌ただしくなった米軍人から成る「軍事政権」構想は、明らかに戦争に反対した仏露中の国連安保理諸国や独など「国連査察」を主張した部分に対する揺さぶりである。既成事実を先行させることで、「勝ち馬」に乗せていく策略なのだ。すでに「反戦」を掲げていた国々が、「米に勝ってもらいたい」「米英が治安維持を担当するのは了解」「ただし戦後復興は国連の枠組みで」など、破廉恥な形でにじり寄っている。
※米軍、2方向から首都包囲 来週、暫定政権樹立案も(共同通信)
 http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0404-478.html
※軍主導のイラク復興に反発も=国務省が異論−米紙(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030406-00000274-jij-int
※<イラク戦争>イラク人暫定政権樹立の可能性も 米高官(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030405-00001038-mai-int
※23省庁のトップを米人独占 イラク戦後で英紙報道(共同通信)
 http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0401-413.html

 元々足下がふらついていたこれら諸国の為政者を政治的外交的解決、平和的解決で結束させたのは、それぞれの国内の民衆世論であり全世界的な巨大な反戦平和運動のうねりであった。ここでもう一度、国際的な反戦世論と反戦運動の力を総結集して、これら安保理諸国の腰砕けと対米接近・対米協調の道を閉ざさなければならない。
 侵略者に恩賞を与えてはならない。米英を侵略者、戦争犯罪者、国連憲章と国際法を踏みにじった犯罪国家として国連の名でその罪を裁かねばならない。拒否権を使うなら使わせるがいい。なし崩し的に米英を追認し国連の「正当性」を付与するなどもってのほかである。それこそ「国連の死」である。
※<イラク戦争>独首相、米英との協調姿勢示す(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030405-00003054-mai-int
※国連平和維持部隊へ派兵も=フセイン政権打倒を容認−独首相(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030405-00000060-jij-int
※イラク戦で対米関係悪化させるつもりはない=ロシア大統領(ロイター)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030404-00000143-reu-int

(2)「米軍事政権」は国際法違反。「国際承認」反対の世論を喚起しよう。
 「米軍事政権」樹立に関する最大の争点は、その国家承認問題である。今回の対イラク侵略が国連憲章違反、国際法蹂躙なのだから、その結果も国連憲章違反、国際法蹂躙である。原因が違法なら結果も違法である。原因は違法だが結果は合法というようなバカな真似をさせてはならない。国際世論と反戦運動は、米による「植民地政権」に絶対承認を与えてはならない。

 米英は植民地主義で首尾一貫している。国連と世界がふらついてどうするのか。ここが踏ん張りどころである。ブッシュ政権は今回の戦争の植民地的性格を誰の目にも明らかなほど露骨にしている。曰く。その政権の性格も、閣僚人事も、内外政策も全てブッシュ政権が決める、と。退役将校を元首に据えることがリークされている。アフガニスタンのような傀儡政権ですらない。露骨極まりない正真正銘の宗主国アメリカ合衆国の「植民地総督府」、軍事独裁政権なのである。

(3)「米軍事政権」の「合法化」作りで再び暗躍する小泉政権。「承認」阻止は私たち日本の運動の差し迫った課題。
 小泉政権はこの「植民地総督府」を真っ先に承認するだろう。これだけは私たち日本の世論と運動の力で何としても阻止しなければならない。侵略戦争に群がって金儲けをしたらおしまいである。自衛隊と政府与党・外務省はすでに自衛隊派兵に向けて動いている。また政府与党は不況に喘ぐ企業と結託して「戦後復興」の公共事業に群がろうと策動している。この血に染まった「米軍事政権」の樹立に奔走しているのである。
※仏独ロ外相、イラク復興に国連の役割求める(ロイター)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030405-00000238-reu-int
※日本が分割方式打診 民生部門は国連中心(共同通信)
 http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0406-522.html
※日本の関与は戦況次第 欧州諸国の賛同目指す(共同通信)
 http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0406-532.html

(4)侵略と殺戮と破壊の尻拭いを押し付けるブッシュ政権。
 政治権力を米軍が独占しながら、その「戦後復興」費用は、@イラクの石油輸出を再開させて捻出すること、Aイラク侵略を支持した日本や「有志同盟」国から財政負担させること、B安保理と国連に負担させること等々、好き放題の要求を全世界に突き付けている。

(5)早くも侵略戦争の本質を露骨にするブッシュとブレア。
 更に石油強奪−戦争特需−帝国覇権という「三位一体」からなる今回の侵略戦争の真の狙い、そして本質を、文字通り地で行くような出来事が相次いで暴露されている。−−イラク油田を統括する政権担当部署に元シェルのトップが就任する。国営イラク石油は早期に民営化する。つまり国有財産の外資=石油メジャーへの「払い下げ」である。
−−「復興特需」はすでに戦争前に米政府機関「米国際開発庁」が、政府御用達の石油・建設独占資本であるハリバートン、ベクテルなど米多国籍企業5社に独占発注した。等々。
※「石油強奪と戦争特需:対イラク戦争は石油=軍事帝国アメリカの“巨大公共事業”−「石油動機説批判」「石油無関係説」のいかがわしさ−」(署名事務局)
※イラク西部の拠点制圧、石油戦略とも一致=アラブ義勇兵の流入チェック−米軍(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030404-00000900-jij-int

(6)化けの皮は剥がれた!「大量破壊兵器」はどうなったのか。何が「イラク民衆の解放」か。
 ブッシュ政権は今回の「ウソの戦争」で2つの「大義名分」を掲げた。第一に大量破壊兵器の廃棄である。現在まで大量破壊兵器は発見されていない。イギリスの労働党首脳であり政府高官であった人物は「最初からないことは分かっていた」とその陰謀的性格を今になって暴露した。
※化学兵器発見されず=イラク疑惑施設(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030405-00000026-jij-int
※大量破壊兵器発見できず 戦争の大義欠き、米に焦り(共同通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030401-00000101-kyodo-int

 だから「最後通告」と「宣戦布告」で、米英は突如「イラク国民の解放」をもう一つの戦争目的に挙げた。しかしこれはすでに世界中の民衆が理解しているように、甚大な犠牲と破壊行為によってデタラメであることが一目瞭然となっている。
 石油強奪と戦争特需と軍事的世界覇権のための侵略であることが今や明々白々となってきたのである。


X

(1)諦めることなく、屈することなく。
 市街戦への突入、バグダッド包囲、「米軍事政権」樹立策動、国連安保理諸国の米英への傾斜等々。−−それには米国内の反戦運動、更には私たち日本を含む国際反戦世論と反戦平和運動の志気と戦闘力を挫こうとする狙いもある。
 侵略者に有利な戦況と進撃を前にして、諦めることなく、また屈することなく、米英の侵略者たちを国際的に包囲し孤立させる闘いを更に強化し継続しなければならない。
※「“ウソの戦争”窮地に陥る米英「戦争プロパガンダ」。翼賛メディアのウソとでっち上げに警戒を!」(署名事務局)

(2)私たちはイラクの兵士と民衆の反米・反帝民族独立=民族解放の戦いに最後まで連帯する。その歴史的な意義を感じながら。
 イラクの兵士と民衆は甚大な犠牲者を生み出しながら「バグダッドの戦い」を展開している。私たちの闘いもまさにこれからが正念場である。
 イラクの兵士と民衆の反米・反帝民族独立=民族解放の戦い、私たちを含む世界民衆の反戦平和の闘いは、それぞれの思想・信条、それぞれの立場を超えて客観的には、共通の敵である米英の帝国主義・植民地主義体制の復活に対峙する歴史的な闘いである。新しい21世紀を戦争の世紀にするのか平和の世紀にするのか、世界平和と人類の生存を決する歴史的な闘いである。
 まだ過程は進行中である。戦争勢力と平和勢力が真正面からぶつかり合ってせめぎ合っている段階である。大げさではなく、私たちの一挙手一投足が、諦めずに闘い続けることが未来を切り開くのである。私たち一人一人の反戦の意志と行動こそが、歴史を創造しているのである。合唱の巨大な響きは一人一人の小さな独唱からしか実現しない。
※「石油=軍事帝国アメリカの世界覇権とこれに立ちはだかる史上空前の巨大な国際反戦行動」(署名事務局)

2003年4月6日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


[翻訳資料]
最終攻撃の新しい危険
New Dangers in Final Push
マイケルR.ゴードン
By MICHAEL R. GORDON
The New York Times April 5, 2003
http://www.nytimes.com/2003/04/05/international/worldspecial/05STRA.html?pag

 ドーハ基地、クウェート、4月4日。 アメリカ軍がバグダッドの郊外に突進したので、多くの人々は、戦争はほとんど終ったという印象を受けているようである。しかし、アメリカ軍は、これまでの日々のような広大な地域をカバーした速いペースの作戦から、イラクの首都の街路という、限られた地域でのより秩序だった戦闘へと移行しつつある。

 陸軍と海兵隊の20,000人の部隊によってイラク深部への素速い侵攻作戦が行われた。アメリカ軍は、共和国特別防衛隊と治安部隊約15,000〜20,000によってまだ防衛されている450万人の首都の戸口の上がり段のところにやってきた。戦争は、アメリカ人の指揮官にとってはうまくいっている。しかしバグダッドのダウンタウンでの戦闘はいつもより困難だった。

 アメリカ軍の指揮官は、今後の日々に向けて幾つかの戦略を煮詰めている。一つの考慮中の大胆なやり方はバグダッドの一部を占領することである。それはイラクが彼らの軍のために使うことを妨害するためであり、将来のアメリカの作戦のために拠点として使うためである。もう一つのものは、軍事司令部中枢に対する武装攻撃、あるいはあるいは軽歩兵を使った政府司令センターや他の重要目標に対する襲撃である。

 どちらの方法にしても、アメリカは、今まで彼らが行ってきた電光石火の作戦から、まさにその正反対である戦争の複雑な段階に入るところだ。

 「我々は変化しなければならない」とあるアメリカ軍の当局者が今日語った。結果として、「戦術およびテクニックは違ったものになるだろう。」

 3000〜5000ヤードも見渡せる広々とした砂漠での作戦行動の代わりに、彼らは視野が300から500ヤードに限られる地域で作戦をすることになるだろう。選択される武器は、もはや手際よくイラクのT-72戦車をアウトレンジから撃破してきたM-1戦車ではなく、イラク側も豊富に持っている携帯兵器、武器になるだろう。部隊の展開もまた異なる。広く展開するのではなく、小さくまとまって行動することになるだろう。

 アメリカは、精密誘導攻撃を行うことで空軍力を最大限に活用するよう試みるだろう。しかし、都会の環境は敵を爆撃するときにアメリカ人の指揮官にはるかに選択的に攻撃することを強いるだろう。

 イラク人の側でも、対空機関砲を使うことによってアメリカ軍の空軍力での優位を低下させようと試みるだろう。この兵器はアメリカ兵をバグダッドに入れようとするヘリコプター部隊の作戦を脅かす。イラクは明らかに、共和国防衛隊が北部および西部から首都への接近を見えにくくするために、戦術として今夜使ったように火を灯すかもしれない。

 襲撃あるいは空襲の成功は、イラクの政府の場所、および内部の活動−−このイラク政府はごまかしと独裁的支配を長年にわたって行ってきたのだが−−について適時の、また信頼できる情報に非常に微妙に依存している。

 市街戦は、終局を除くすべての局面において戦争の最も不確かな段階である。アメリカの希望は、アメリカ軍による継続的な空襲によるショックが都市の周辺で、そして都市の中でさえ効果を発揮し、政府を揺すぶって瓦解させることであり、陸軍および海兵隊、特殊作戦部隊は都市部に急進撃して政府の破片を拾い集めるだけでいいというものである。

 しかし、イラクの南部都市での同盟軍の経験は、アメリカ軍が彼らの真ん中に存在し、政府を打倒し、もはや政府が持続しないようになるまでは多くのバグダッド住民が政府と敵対することを嫌がるだろうことを示唆している。

 大統領サダム・フセインの治安機構がまだ首都を統制しおり、そして最近は、今日テレビで彼は支持されているのを流したように、彼は生きていて支配権を握っていると伝えている。

 バグダッドの最近の停電は、フセイン氏が人々に一体誰が基本的なサービスを支配しているかを知らせるためにやったのではないかと、何人かのアメリカ軍人は見ている。彼の軍事力は、共和国特別防衛隊を含めて活動的だ。それは今日バグダッドで巡回し訓練しているのが観察されている。

 バグダッドの南方でキャンプを張ったアメリカ軍は、多くの打撃力を持つが、巨大とまではいかない。第3歩兵師団の大部分と101空挺部隊の一部は主要な空港[フセイン国際空港]に配備されている。海兵隊部隊は、バグダッド南東のバグダッドへの途上で戦闘しおり、1個師団よりも小さい兵力だ。士官たちは全部で20,000人の兵力だと言う。

 アメリカの軍隊は、まさに彼らがバグダッドに向かって進むにつれて、南部で準正規軍と戦うことを強制されたときに、軍事力が薄く引き延ばされていることに気付いた。バグダッドの広さを考えれば、アメリカ軍のサイズは制限されていて、それに戦術を合わせることを指揮官に強いるだろう。

 より多くの兵力が潜在的には利用できる。しかし、その若干はバグダッドに間に合わないだろう。第82空挺師団はまだサワナで支配を完全にしようとしている。第101空挺師団の多くは、カルバラおよびナジャフで現在治安を維持している。最も近代的な装備を持っている第4歩兵師団は、ようやくクウェートに到着しつつあるところだ。しかし、北に急行させる前にその装備のチェックをしなければならない。第3装甲騎兵隊連隊はるかに離れている。

 確かに、アメリカ軍はバグダッドへの急侵攻でそれ自体とてもよい結果を得た。第5軍団は、木曜日に推定2,000人のイラク兵を殺したと報告しており、さらに今日推定400人を殺したと報告している。またT-72戦車30台と数多くの車両を破壊した。

 バグダッドの南東の郊外に奮闘して進んだ海兵隊は、ロケット推進式の手榴弾[PRG-7のこと]で彼らを待ち伏せようとした敵と激しい戦闘をした。海兵隊は、共和国防衛隊、イラク軍、およびエジプト、ヨルダンの志願兵の奇妙なグループを打撃したと報告している。彼らは約300人の敵とT-55戦車12−15台を破壊したと報告した。

 イラク人は砂漠で十分に打撃を受けた。アメリカ軍は共和国防衛隊を撃破した。しかし、イラク人はまだ諦めていない。バグダッド政府は、新しい戦術を使っている。いくらかは、大砲として高射砲を使うことと同じ程簡単だ。他のものは、従来型のやり方でない自爆攻撃を含む。

 アメリカ人は、ブロックからブロックへの市街戦を避けることを望んでいる。しかし、彼らは、バグダッドの主要な部分を接収するための軽歩兵による急襲、中心地の戦闘指揮所を攻撃する武装侵攻という新しい戦術も考えている。

 バグダッドは、フセイン氏が彼の最終的な抵抗の舞台にすると思われる場所だ。アメリカ軍のクライマックスの戦闘もそこに定められそうだ。