バスラの市民と子どもたちが危機に瀕している
米英軍は直ちに空爆・地上攻撃をやめよ!イラクから出て行け!


 侵略した米英軍とイラク軍との間で今なお激しい戦闘が継続しているイラク南部バスラ(イラク第二の都市、人口約154万人)で、水、食糧不足が心配され始めている、と各種報道機関が伝え始めました。12年間にわたる国連制裁の上に始まったこのイラク戦争の中で、最も恐れられている事態にバスラが直面しようとしています。

(1)最大の「人道支援」は即時無条件の戦争中止。
 マスコミは、盛んに米英日の「人道支援」についての発言や計画を書き立てています。しかし無差別大規模空爆、罪なき市民への虐殺、大量破壊行為、生活と生命に直結するインフラをメチャクチャに攻撃しておいて、何が「人道」なのか。劣化ウラン弾、クラスター爆弾、ナパーム爆弾など非人道兵器を好き放題使っておいて、何が「人道」なのか。まさにブラックジョークです。唯一最大の「人道支援」は、今すぐ戦争を中止することです。それ以外にはありません。
 私たちはこの侵略戦争の真実・実態に少しでも迫り、戦争反対、米英軍はイラクの地から直ちに出て行けの声を一層大きく上げねばなりません。この街に起こっていること、起ころうとしていることに警鐘を鳴らし、全世界に「NO WAR!」を訴えましょう。


(2)空爆・地上戦による死者が続出している――戦闘を直ちに止めよ!子どもたちをこれ以上殺すな!
 バスラは3月20日米英攻撃開始早々から空爆の標的となりました。地上軍が侵攻を開始した21日にはナパーム弾が使用されたと伝えられています。以後、子ども、女性を含む犠牲者の数が飛躍的に増えています。
 21日、湾岸戦争時に打ち込まれた約290発をすでに上回る400発のトマホーク、爆撃機のべ1000回以上出撃という大規模空襲、22日にはF16戦闘機によるクラスター爆弾の使用、さらに地上侵攻による攻撃とあいまって、子どもを含む7人死亡・366人負傷という一日ごとの犠牲者の数字は、51人死亡、77人死亡・366人負傷と一挙にはねあがりました。激しい戦闘が継続しているバスラでは、市民も否応なく戦闘に巻き込まれています。

 そもそもこのような事態は、私たち事務局が開戦前にホームページ上で紹介した国連極秘文書「起こり得る人道主義的諸シナリオ」の中でもすでに予測されていたことでした。
 文書はこの戦争を「予備的で比較的短いインフラ・町・都市への空爆の後に、空からの通常兵器による爆撃支援を受けながら大規模で長期にわたる地上攻撃へ発展するかもしれない」と前提していました。しかし、事態は町・都市への空爆が「予備的で比較的短い」ものなのかどうか決して予断を許しません。
※「国連極秘文書−イラク戦後復興という名の侵略計画」(署名事務局翻訳資料)
※「イラク侵攻で100万人以上の幼児が危機に」イラク制裁反対キャンペーン「イラクと近隣諸国のための統合人道主義的緊急事態計画」に関するノート(抄訳)」(署名事務局翻訳資料)

 バスラを含む南部の人々は文書の中では、「人道的介入をすぐにでも必要とし、アクセスを期待している住民」と位置づけられていたのですが、トータルで540万人(それに国内避難民と難民200万人が加わる)。その人々の上に米英軍はあらゆる「非人道」兵器、ジュネーブ協定に違反する兵器をもって襲いかかっているのです。文書では「直接的そして間接的な死傷者」を戦争全体で何と50万人とカウントしていました。この予想がまったくはずれることを願わずにはおれません。


(3)水不足が深刻化している――それは二次的、三次的な災厄を人々にもたらす。
 報道によれば、バスラで深刻な水不足が生じています。赤十字国際委員会(ICRC)によると、21日、激しい戦闘の結果としての電力供給中断の影響などで、すべての水処理施設が作動しなくなりました。ICRCの技師らとバスラ市水道局は22日、予備の発電システムを使って水道水の供給を部分的に再開しましたが、平時の40%程度しか供給できていないと、伝えられています。さらに、水質は劣悪と言われています。ICRCの担当者は「(現在供給されている)水の質は従来と同等ではなく、40%の供給量ではこの町にとって十分ではない。この意味で、状況は依然深刻だ」と述べています。アナン国連事務総長も、24日に「市民は危機に直面している可能性がある」と述べ、同時に、気温が摂氏40度まで上昇するバスラで十分な飲料水を確保するための緊急対策を要請しました。
 ICRCや国連の今更の指摘を待つまでもなく、この事態も先の極秘文書で予測されていたことでした。
※イラクのバスラ、給水復旧なければ深刻な人道危機も=赤十字(ロイター)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030325-00000877-reu-int
※イラクで人道上の懸念、援助物資輸送が困難に(ロイター)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030325-00000872-reu-int
※「Basra Facing Disaster After Supplies Cut 」March 24, 2003 by the Edinburgh Evening Herald (Scotland)
 http://www.commondreams.org/headlines03/0324-03.htm

 この間の戦闘によって例えばワファ・アルカイド浄水場に電気を送るケーブルが破壊されました。この浄水場は200万人の人々に水を供給する、この地域では最大のものです。そしてこの浄水場をアメリカ軍が支配下に置いたのです。
発電所・送電・配電網に対するダメージが上下水道に、さらに医療関係に確実に二次的な能力低下をもたらしているのです。水処理は電力を要します。処理能力が戦闘でひどく破壊され、能力が残らなくなること、飲料水の使用が高価なものになること、それらは文書が恐れていた事態でした。
 ユニセフは住民の約39%が「予備」発電設備を持つ処理施設による飲料水の供給を、しばらくの間受ける必要があると見積もっていました。まさに予測に近い事態が現実に起こっているのです。

 そう考えると極秘文書の予測は避けがたい現実のものとして迫ってきます。すなわち、「南部の州で被害を受ける住民を考えると」、「今すぐの要求は約407万の人々が清潔な水へアクセスできるようにすることである。水処理のために必要な化学物質、すなわち塩素や硫酸アルミニウムと、発電能力を伴った処理施設のための他の諸消耗品が、制限される可能性も銘記しておくべきである。」
 飲料水の不足という報道は、単にそれに止まらず、電力網の破壊、電力の不足という事実、また栄養状態・衛生状態の悪化、従って医療事態の悪化(暑く湿気のあるバスラで下水道が稼働しないことによる胃腸病の発生がすでに指摘されています)、化学薬品の制限等一切合切を含んでバスラ住民の状態の劣悪化・最悪化を意味しているのです。


(4)緊急物資輸送が困難になっている――それはバスラを包囲する米英軍のせいである。
 ブレア英首相は、南部のイラク軍による「抵抗」で食糧などの援助物資の供給が阻まれている、と議会で認めました。
 そもそも援助物資を必要とするというのは、米英の軍事侵略が、バスラ住民に対するイラク政府の日用品配布、サービスの提供のルートや機会を破壊し、奪い去った結果に他なりません。「政府によって提供されるサービスが、全住民に対して同時に停止することはありそうにない。むしろ、日用品の配布とサービスの提供が徐々になくなり、ついには中止される可能性が高い。南と北から軍事介入が同時に密かに進むと仮定すると、南部のバスラ、メイサン、ティカル、ムサナ、ナジャフ、ケルバラとクバディシャの周辺州と、・・・即座に影響を受けるだろう。」(『起こり得る人道主義的シナリオ』より)

 そもそもイラクは人口2200万人の6割が食糧・必需品の「国家配給制度」に依存する国になっています。国連制裁を経て国民は一層イラク政府への依存を強めています。このような中で米英が国家や地方政府を破壊しようと介入したのです。
 フセイン政権打倒を目指す米英軍は、イラク南部でイラク唯一の本格的港湾があるウムカスルやバスラ周辺を速やかに制圧したいと考えています。その分イラク人民の抵抗が熾烈なものになるのもやむを得ません。攻撃開始から一週間経っても米英軍がまだ両都市を完全に掌握しきっていないという事情はそれをよく表しています。

 しかし、それはバスラという都市包囲戦がより長期化することを同時に意味しています。まさに住民は兵糧責めの仕打ちに置かれるのです。バクダッドも早晩同じ運命に置かれないという保証はどこにもありません。侵略軍はそれを自分たちのせいには決してしません。やれフセイン体制に忠誠を尽くさざるを得ない精鋭軍や民兵の抵抗が激しいだの、子どもや女性をおとりにして民間人を装って、降伏したふりをして攻撃するだの・・・。
それがどれほど住民の栄養状態を酷いものに導くか。なかでも5歳以下の、制裁下でただでさえ酷い状態に置かれている幼児(国連子ども基金はすでに10万人以上の子どもが病気の危機に瀕していると警告しています)、また妊婦や授乳期の女性にどれほどの打撃を与えるか。孤児や重度の障害者など最弱者のグループはどうなるのか、老人たちは、そして南部の国内難民と呼ばれる人々や、難民の運命は・・・(都市を脱出したバスラ市民が、砲弾飛び交う地をさすらう難民の群に加わることも危惧されています)。

 弱り切った人々の上に雨霰と降り注ぐ「新型兵器」。電気も水もない都市。包囲網はいつ解かれるかもわからず、いつ市街戦に巻き込まれるとも知れぬ息を潜める生活。何よりも恐れるのは、イラク人民の抵抗に激昂した米英兵がその不満の捌け口を弱り切った住民に向け、虐殺を始めないという保証がどこにもないことです。
考えれば考えるほど国連秘密文書の内容が現実化していくことに、激しいいらだちと憤りを覚えざるを得ません。この事態を「人道上の危機」と言わずに何と呼ぶのでしょう。

 バスラ――石油精製の最大センター。バクダッドに至る水路に沿った港町。636年、初期イスラムのカリフの一人によって建設された軍事的要衝。この都市は何度も戦乱に巻き込まれ、1984年イラク・イラン戦争の際にはわずか二日で2万5千人が殺されました。この都市が今再び「人道上」最も危険な都市にされつつあります。バスラが危ない。バスラの市民が危ない。中でも子どもたちや女性たちが恐ろしい目に合わせられようとしている。・・・この危機を救う道はただ一つ――侵略した米英軍をイラクから叩き出すことです。私たちはイラク戦争反対!石油のための戦争反対!米英はイラクから手を引け!の声を日本と世界の平和を愛する人々と共に一層強めなければならないと思います。


2003年3月27日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局