子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
S070920 学校災害 2014.5.23新規
2007/9/20 愛知県名古屋市の市立小学校の運動場で、9月29日に予定されていた運動会の組み立て体操(組体操)の練習中に、男子児童Xくん(小6)が4段ピラミッドの最上位から落下し、左上腕骨外顆骨折の傷害を負った。
経 緯 2007/9/18 4段ピラミッドに取り組んだ際、6年1組の児童のみの4段ピラミッドの最上位のを担当していた児童Iくんが、最上位で立ち上がろうとした際、足下の3段目を担当していた児童の首の後ろが沈んだため、バランスを崩し、しゃがむこともつかむこともできず、前方へ落下。
Iくんは頭を打ち、夕方から気分が悪くなり、受診。翌日、病院で頭部のレントゲンを撮影するなどの診察を受けた。Iくん落下の際、Yくんも腰を痛め、受診。

Iくんが最上位の児童の担当を辞退することになったため、運動能力にすぐれたXくんが教師から選ばれた。Xくんが承諾したため、最上位を担当することになった。

4段ピラミッドの組立ては、教師の合図に合わせて次の行動に移ることとされており、具体的には、1回目の合図が鳴ると土台の児童が準備をし、次に合図が鳴ると、2段目の児童が準備をし、次に合図が鳴ると、3段目の児童が2段目の児童の上に乗ってしゃがみ、次に合図が鳴ると最上位の児童が3段目の児童の上に乗ってしゃがみ、次に合図が鳴ると3段目の児童がゆっくり立ち上がり、次に合図が鳴ると最上位の児童がゆっくり立ち上がり、最後の合図で最上位の児童が手を水平に挙げ、土台の児童が顔を上げるというようにされていた。

2007/9/20 4段ピラミッドで、2段目の児童の上に乗る際、土台の児童の間隔などがいびつな形になっていたため、2段目の児童もきれいな形になっておらず、足の置き場が以前と違っており、足が開いたような状態になった。

さらに、3段目の児童らが、2段目の児童に乗ったところ、2段目の児童は「痛い、痛い」などと言って、体が動いたため、足場が安定せず、バランスを保つため、頭を上げたような態勢となった。
3段目の児童らは、バランスが悪く危険なため、やり直した方がよいか話していたが、教師が合図を進めていったため、途中でやめることができず、合図に合わせて立ち上がった。
続いて、Xが、教師の合図で立ち上がったところ、3段目の児童らの体が揺れて、足場が安定せず、Xは4段ピラミッドの南側に落下した。
背 景 同小学校の平成19年度の運動会は、9月29日に予定されていた。
本件小学校では、同年の運動会において、5、6年生が合同で行う組体操を実施する予定であり、その演目として、1人で行う技から始まり、順次、より人数の多い又はより難度の高い技に移っていく予定だった。
被害者 被害にあった男子児童Xくんは、サッカー部に所属し、運動能力も高かった。
Xくんは負傷により、44日間、左上腕をギブスで固定。ギブスを外した後も、左腕が曲がった状態になっており、日常生活で不便を強いられている。
また、Xくんは小学校2年生のころから道場で空手を習っており、平成18年度、平成19年度の愛知県大会で空手の型の部門で優勝するなどしていたが、本件負傷により、左腕が曲がっていることが型の部門の判定において減点対象とされ、級も上がることができないため、空手をやめざるを得なくなった。
さらに、野球やバスケットボールなど腕を使った競技をするについても、左腕に痛みを感じているという。
教師の対応 教諭らは、組体操に取り組む際には、怪我をしないように、以下の@ないしCの事項を守ることを児童に指導していた。
@ 女子児童について、髪が長い場合は後ろで束ねてゴムで結ぶこと。
  ピンの使用は危ないので避けること。
A 帽子(つばのある赤白帽子)は、視野を妨げる場合があるので、かぶらないこと。
B つめを切ること。
C 演技中はしゃべらないこと。

また、複数の児童で取り組む技のうち、土台となる児童の上に児童が乗るミニタワーなどの技について、下の児童は、上の児童を支えるときは、腕・脚・背を伸ばして体全体で支えること、上の児童は跳んで降りないこと、落ちそうになったときはしゃがむことを指導していた。
被告側の主張 男子児童が、およそ2mの距離を跳躍するという突発的な行動に出たため生じたと主張。
判 決
(一審)
2008/12/25 名古屋地裁で、勝訴判決。
名古屋市に110万1360円の支払いを命じる。

4段ピラミッドは、15人の児童が3段となって、最上位の児童を支える技であり、4段ピラミッドの最上位の児童は、地上2m以上の高さで立ち上がることとなる。
4段ピラミッドは、元々上の段になるほどバランスが悪い状態であるうえに、土台の児童や2段目の児童の姿勢が悪い(背中が丸くなっているなど)場合や、土台の児童や2段目の児童がピラミッドの中心から等距離・等角度に並んでいない「いびつな形」の場合には、3段目の児童の立つ位置が安定しないなど、下の段の組立てが不安定になり、そうすると、上の段はさらに不安定な状態となる。
そして、4段ピラミッドは、最上位の児童が、立ち上がった際に、つかまる物が何もないため、最も不安定な状態となり、落下する危険性を有する技である。
また、遅くとも平成16年ころには、組体操の指導に関する文献においても、最近組体操の練習中のケガが多いとの指摘があることが記載されていた。

A1(教諭)は、I落下事故によって、しゃがまない、しがみつかない児童がいることを認識していたのに、IやA3教諭からI落下事故について十分な聴き取りをしないまま、従前の指導方法を安易に継続している。
また、A1(教諭)は、Iがしゃがまなかったのは、立ち上がろうとした際であるから、しゃがむのは困難であると証言しているのに、その対策について、何ら講じていない。
そして、A2(教諭)にいたっては、IがしゃがんだのかなどI落下事故時の状況について全く認識しないまま、安易に従前の指導を継続しているのであり、I落下事故が発生した後も、児童に対して、落ちそうになった際の対応を十分に指導したり、教員の側で対処したりしたとは認められない。

4段ピラミッドにおいては、教員が少なくとも1人は補助について、児童の様子を注視し、バランスが悪い場合には、その段階で組立てを止めるよう指示することが必要であり、教員の補助がないまま、単に無理をしてやらないよう指導するだけでは、危険を回避・軽減する指導として十分なものとはいえないのである。

A1(教諭)らは、本件4段ピラミッドの最上位の児童であった原告が落下する可能性があることを前提に、原告に対し、危険を回避・軽減するための指導を十分に行うべき注意義務があった。
また、A1(教諭)らは、3段目以下の児童が不安定な状況で、原告を立ち上がらせないように、本件4段ピラミッドの状況を十分把握して合図を出すべき注意義務があり、仮に3段目以下の児童が不安定な状況で合図が出されてしまった場合であっても、本件4段ピラミッドの近くに教員を配置して、本件4段ピラミッドの状況に応じ、3段目以下の児童が不安定な場合には、その段階で組立てを止めるよう指示すべき注意義務があった。
そして、A1(教諭)らは、原告が自ら落下を回避することができずに落下する事態に備えて、補助する教員を配置するなどして原告を危険から回避・軽減させる注意義務があった。

A1(教諭)らは、原告に対し、危険を回避・軽減するための指導を十分に行っていないうえに、A1(教諭)は、本件4段ピラミッドの3段目以下の児童が不安定な状況にあったのに、これを把握しないまま漫然と合図を出し、また、A1(教諭)らは、本件4段ピラミッドの状況を近くで把握し、合図にかかわらず組立てを止めるよう指示することのできる教員を本件4段ピラミッドの近くに配置せず、さらに、原告の落下に対して、補助する教員を本件4段ピラミッドの近くに配置していなかったのであるから、上記の注意義務を怠った過失があるというべきである。

A1(教諭)らは、本件事故時の立ち位置という記憶違いを生じるとは考えられない事項につき、事実と異なる内容を述べていること、A1(教諭)らの報告に基づいて作成されたと考えられる本件事故に関する災害報告書に、4段ピラミッドで生じた本件事故を、「3段タワーの練習をしていた」際に生じた、と事実と異なる記載がされていること、児童Wらへの事情聴取においても、教頭が、「バランスが悪いときは、どうしなさい。とか言われなかったかな。今年の組体操では、危ないときしゃがむように言われているんだけど。」などと誘導し、また、「X君が跳び降りたのは、立ってからか、しゃがんでからかどちらだったのかな。」などと、Xが跳び降りたか否かを聴き取ることなしに、これを前提として事情を聴いていることなどの事実からすると、本件小学校は、教員らの保身のために、本件事故の状況について、学校側の責任が軽くなるように意図的に工作していることがうかがわれ、本件事故に関する部分のその他のA1(教諭)らの証言等についても、信用性に疑問が生じるものである。

被告は、本件事故は、原告が、およそ2mの距離を跳躍するという突発的な行動に出たため生じたものであり、A1(教諭)らには予見することができなかったから、過失の前提となる予見可能性を欠いている旨主張する。しかし、本件事故において、原告が跳躍したと認められないことは前記のとおりであり、被告の主張は、その前提を欠いたものである。

被告は、@運動会の競技は、体育的行事の一環として、児童による自主的な活動が助長されることも求められているのであるから、段階的な練習を重ねてうまくできた後は、教員の複数の補助に頼らず、自分たちで挑戦することも大事なものであるとか、A担任を持たず、学校組織運営上の役職にもつかない教員が極めて少ない中で、1基のピラミッドに対して、複数の教員を補助につけることは実際問題として著しい困難を伴うものであるなどと主張する。
いずれも、複数の教員を補助につけられないことに関する主張であるが、本件事故時には、本件4段ピラミッドの付近に教員は1人も配置されていなかったのであるし、上記@については、児童の自主性と児童の安全とは別次元の問題であり、あくまで生じうる危険から児童の生命、身体の安全の確保が図られていることが大前提であって、自主的な活動の助長のため安全の確保を図る必要がなくなるわけではなく、上記Aについても、児童に4段ピラミッドのような転落の危険を内在する技を行わせる場合、人員の不足のために安全の確保を図る必要がなくなるわけではないのであるから、いずれも被告の責任を否定する理由になり得ないことは明らかであり、被告の上記主張はいずれも理由がない。

以上の事実に加え、本件においては、本来信用できる存在であるべき学校側(被告)が、教員らの保身のために殊更に虚偽の事実を主張するなど誠意のない対応をとっているのであって、これらの一連の被告の対応は、本件負傷による原告の精神的苦痛を増大させたものと認められる。

小学校の正規の授業は、児童が担当教員の管理下にあってその指導に服し、担当教員の指示等を信頼して行動する関係にあり、担当教員の側も心身ともに未発達な児童を指導するのであるから、4段ピラミッドのような元々事故の危険を内在する技を行わせる場合には、児童に不注意や能力不足があることを考慮に入れて安全な指導、監督ないし補助を行うべきであって、児童が故意に指示に違反した等特段の事情があればともかく、児童に通常の不注意や能力不足があったからといって、被害者の過失と評価することはできない。
本件事故においては、被告が主張するような原告が跳躍したと認めるに足りる証拠はないし、原告が故意にA1(教諭)らの指示に違反したことを認めるに足りる証拠もないから、本件事故について原告に過失があると評価することはできず、被告の上記主張は理由がない。
参考資料 裁判所ホームページ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405141507.pdf




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