気候危機と生物多様性の破壊;解決には脱軍備が必須ーG7こそが問題の温床ー(湯浅一郎)

気候危機と生物多様性の破壊;解決には脱軍備が必須
          ーG7こそが問題の温床ー   

               湯浅一郎(ピースデポ)

20世紀末、人類は「地球環境容量の限界」に直面していた。それへの対応を始めた転機は1992年のリオデジャネイロ地球サミットで気候変動枠組み条約と生物多様性条約という2つの画期的条約を採択したことである。「自然との持続可能な共存」が喫禁の課題となった背景は、産業革命からの約250年間にわたる化石燃料依存文明の拡大にある。産業革命以降の人間活動の規模拡大の歴史は、南極氷床を分析した大気中の二酸化炭素濃度の変遷から推測できる。変曲点は18世紀後半からイギリスで始まった産業革命にある。大気中の二酸化炭素濃度の増加傾向には3つの傾きがあるが、1960年代から一気に上昇した。問題の根源が、まぎれもない欧米を中心としたG7にあることは明白である。

生物多様性の保全・回復への取り組みは30数年の歴史があるが、ほとんど成果らしい成果は見えない。そうした中で22年12月、モントリオールで開催された生物多様性条約第15回締約国会議は、2030年へ向けた「昆明・モントリオール世界生物多様性枠組み」に合意した。「今までどうりから脱却」し、社会変革をめざし、「世界の陸域、海域の30%以上を保護区にする」(目標3)、「劣化した生態系の少なくとも30%を再生する」(目標2)など高い目標を掲げている。

G7は、2021年、コーンウォールサミット(英国)で2030年「自然協約」を採択し、2030年までに自国の陸域と海域の少なくとも30%を保全すること等を約束した。そして、「世界的なシステム全体の変化が必要とされている」などとし、昆明・モントリオール枠組みとほぼ同じ内容に合意している。これが本気ならば、まずはG7の中心にいる米国は生物多様性条約に加盟せねばならない(国連加盟国で未加盟は米国だけである)。G7は,問題は250年前の産業革命に端を発する化石燃料文明と世界規模の資本主義経済システムにあることを認め、それを克服する道を示すべきである。しかしG7広島サミットがそうした根本的対策を用意している気配は全くない。

日本政府は、2023年3月、昆明・モントリオール枠組みに沿って第6次生物多様性国家戦略を閣議決定し、「陸と海の30%以上を保護区にする」などを盛り込んだ。そのためには、海でいえば2016年に環境省が抽出した全国に270か所ある『生物多様性の観点から重要度の高い海域』はすべて保護区にすべきである。そうなれば、例えば辺野古新基地建設埋め立てや上関原発埋め立ては中止せねばならないことになるが。

今、G7に求められることは、浪費型文明を見直し、社会変革を進めることである。膨張を前提としたグローバルな資本主義体制の変革が不可欠であり、脱軍備で文明の変革へ向かうべきである。そうした姿勢もないまま、ウクライナ侵攻を口実に軍拡を正当化し、核抑止体制を強化するためにヒロシマを利用することは許されない。