「性暴力とジェンダー」というテーマのもとで(渡辺美奈)

「性暴力とジェンダー」というテーマのもとで

渡辺美奈 (アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam))

G7という枠組自体を批判し、野蛮な植民地支配の歴史を持つ欧米諸国と日本こそが民主的だと勘違いしている社会の風潮に憤り、岸田首相による広島の政治利用を許さない広島の人々に連帯したいと、「G7広島サミットを問う市民のつどい」に参加します。「性暴力とジェンダー」という極めて広いテーマを与えられましたが、当日は、女性たちから聞いた言葉、女性たちが闘いのなかで発した言葉をキーワードに、みなさんと議論をしていければと思っています。

2000年12月に開催された「日本軍性奴隷制を裁く 女性国際戦犯法廷」の準備の一環として開かれた集会で、「戦時性暴力をなくすために何をすべきですか?」との質問を受けたゲイ・マクドゥーガルさん(武力紛争下の組織的強かん・性奴隷制および奴隷制類似慣行に関する特別報告者)は、「戦争をなくすこと、性暴力をなくすことです」と答えました。どちらも途方もなく大変なしごとに見えますが、暴力によって相手を支配する戦争と性暴力の根は同じです。

「暴力を振るうことを目的に、人間の殺し方を日夜訓練している軍隊のそばで、平和に生きていくことはできるのでしょうか」。これは、沖縄で米兵から性暴力をうけた女性が発した根源的な問いです。軍が駐屯している地域、あるいは軍隊内においても性暴力が頻発していることは、困難な中で告発した女性たちの証言からすでに明らかです。軍隊を持つことは平和の準備にはなり得ません。「人間の安全保障」あるいは「民衆の安全保障」といった、「安全保障」の概念そのものを変えていく取り組みには多くを学んできましたが、その多くは平和や人権という言葉で置き換えられます。何らかの脅威を前提とする「安全保障」という軍事的な色彩を変える努力をするよりも、「平和」という概念を豊かに実現していくための努力をしたいと思うようになりました。

「安全保障理事会を平和理事会ととらえ直し、その任務を平和と万人のための平等を推進することに再定義すること」。そう提言したのは、国連安保理に働きかけて、2000年に「女性・平和・安全保障」に関する安保理決議1325号の採択を実現させた女性たちです。大変な思いをして戦争を生き抜いた女性たちの意見を聞き置き、変革への思いやビジョンを裏切り続けている国連加盟国に対して辛辣な批判を展開している女性たちの動きは始まっています。

「戦争だけは二度としてはならない」「二度と自分と同じような苦しみを誰にもしてほしくない」―日本軍性奴隷制のもとで性暴力被害を受けた女性たちが繰り返し語ったメッセージです。この思いを踏みにじり、日韓「合意」と呼ばれるもので解決したとする日本政府、被害者を再び犠牲にして軍事同盟を優先するよう仕向けた米国が参加するG7サミットに「平和」は期待できません。広島集会が、最も小さな声を聞き取り、様々な立場や思いに耳を傾けるフォーラムとして、G7に対抗する場になるよう願っています。