(池田五律)岸田NATO諸国歴訪とG7広島サミット-ウクライナを矢面に立てた対ロ戦争と対中包囲網掲形成のための会議に反対しよう!

以下、賛同人の池田五律さんの記事を『救援』(2023年2月)から転載します。


池田五律(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)

 岸田首相は、G7広島サミットに向け、1月9日から14日、NATO諸国、フランス、イタリア、イギリス、カナダ、最後にアメリカを訪問した。訪問先各国で新しい国家安全保障戦略を説明し、日米首脳会談では、「日本の歴史的な防衛費増額と新たな国家安全保障戦略を踏まえて、日米の軍事同盟を現代化していく」とぶち上げた。

どの国の首脳との間でも、核使用拒否、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持、対ロ制裁・ウクライナ支援、インド太平洋地域についての議論をすること、東シナ海及び南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みへの反対、台湾海峡の平和と安定の重要性などを確認した。G7首脳が核の傘をさして広島に集まり、ウクライナを矢面に立てた対ロ戦争の継続を話し合い、対中包囲網を形成するというわけだ。

二国間では、「太平洋国家フランス」との協力促進、イタリアとは外務・防衛担当相会議(2+2)の立ち上げと戦略的パートナーシップの格上げ、カナダとは経済安全保障分野や開発金融分野における連携が確認された。イギリスとは円滑化協定(地位協定)を締結。アメリカとは宇宙枠組みが締結された。先立つ1月13日の外務・防衛担当閣僚会談(2+2)では、日米安保の適用対象が、宇宙にまで拡大された。英伊とは、戦闘機の共同開発の推進も確認した。また日米首脳会談では、対中半導体規制の重要性など、経済安保での結束も確認した。

 ちなみに、「法の支配に基づく国際秩序」とは国連安保のことである。日本は、2023年1月から2年間、国連安保理非常任理事国を務める。国連安保理でも米英仏日でタッグを組んで中ロと対決することになろう。その先に、日本政府は、国連改革、常任理事国入りという取らぬ狸の皮算用をしている。だが、中ロと米英仏日の対立は、国連安保の機能麻痺をもたらすだけだ。ロシアに代わって日本が常任理事国になれるのは、ロシア敗戦・プーチン政権倒壊・ロシア解体に加えて中国も日本の常任理事国入りを容認せざるを得ないほどに疲弊した状況、即ちロシア帝国、中華帝国の解体という百年越しのG7の「夢」の実現状態でしかあり得ない。

それはともかく、少なくとも、今やプーチンは戦争をやめようがない状態に陥っている。一方、ゼレンスキーは勢いづいている。米NATOは、ゼレンスキーに手打ちを働きかけるわけにいかないし、その理由もない。当面、ズルズルと、ウクライナを矢面に立てた対ロ戦争を長期的に継続していくだろう。ロシア兵が、そしてウクライナ兵や民衆が流す血は、G7にとって「他人の血」であり、その血で軍需産業が肥え太るという寸法だ。

岸田のウクライナ訪問、ゼレンスキーのG7参加も浮上してきた。ロシアの侵略戦争を批判するのは当然だ。だからと言って、戦争のためのG7を容認するべきできではない。反戦の立場に立つ者には、ロシア、ウクライナ、そして世界の反戦運動と連帯し、この困難な局面を打破する論理と実践を模索する責務がある。

尹韓国大統領を招待する動きもある。徴用工問題を日本政府の意向に沿って封じ込めることが、その条件だ。加害の歴史の否認と対中包囲網に組み込みがセットで進められているのだ。

加害否認の歴史観は、対中包囲網形成構想全体に貫かれている。日本に則して言えば。英米と戦争した「失敗」を繰り返さず、英米と共に「中華帝国」の植民地化を推進していった1900年前後を「成功体験」と位置づけ、その夢をもう一度と考えているかのようだ。今の中国は清朝末期の中国ではない。いいも悪いもパワーを増大させている。ところが、その現実から目を背ける根深い中国蔑視と、それとアンビバレンツな中国脅威論が横行している。そうした中で、経済安保強化が及ぼす影響などについての冷静な論議すらすっ飛ばされ、増税大軍拡の既成事実化が進められつつある。逆に、加害の歴史を踏まえた平和的な政経関係を模索することこそが、重要だ。

 G7は、グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)取り込みにも力を入れようとしている。G7主導の「脱炭素支援」は、その重要な手段と位置づけられている。対ロ経済制裁がもたらした物価高などへの途上国の不満が、G7に向くことを回避し、中国の途上国への影響力を削ぐためだ。だが、根底的にG7が途上国に負うべきは、植民地化と搾取の歴史、形を変えた現在に至るその継続の責任に外ならない。

 また、個別テーマの担当大臣会議が、全国各地で行われる。そのことは戒厳体制が、全国各地で敷かれることを意味する。昨年来、サミット警備を理由とした「対テロ訓練」が、全国各地で行われている。

 反戦反核・反弾圧、そして途上国民衆との連帯・・・。様々な観点から、G7に反対していかねばならない。

初出:『救援』2023年2月

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