武藤一羊さんがピープルズプラン研究所のウエッブに投稿した記事(2023年2月14日)をご本人に了解をえて転載します。
1 台湾は米中覇権闘争の賭け金であってはならない。それは台湾民衆の主体性を無視することになる。
2 ロシア・ウクライナ関係と中華人民共和国(PRC)と中華民国(台湾)との国際法上の関係はまったく違う。米日とも「一つの中国」の前提でPRCを承認しているので、台湾の帰属は中国の内政問題とするPRCの主張の正当性は存在する。したがってPRCが武力統一を試みても、それは一国家による他国家の侵略には該当しない。それが「一つの中国」という定式の含意であった。
3 したがって「台湾有事」=「日本有事」と等号で結ぶことは政治的意図によることの本質の隠蔽である。国会、また社会全体でのこの等号を俎上にあげて、吟味する必要がある。
4 われわれは、PRCは武力統一をすべきではないと主張すべきだが、それは日本国憲法の精神の外交上の展開として行うべきである。それは日本国憲を外国方針に展開する通路をひらくことになろう。
5 台湾有事と日本有事を等号で結ぶ事態は、米国が台湾問題を対中覇権構想の駒に組み込み、それを、米国が全一的に支配する日米安保関係によって、あたかも当然のように日中関係の既定要因に仕立て上げた結果である。逆にこの等号を疑問に付し、台湾有事が米国有事であっても、必ずしも日本有事ではないことを明らかにしていくことは、ロシアのウクライナ侵略を引き金とする諸帝国抗争の時代において、その抗争にくみしない新非同盟主義への足場を築くことになろう。
6 岸田内閣は、その党内的立場の脆弱さを補填するためにも、周知のように、それこそ異次元の軍拡予算と戦争計画を裏で決定し、アメリカの対中戦争を最前線で担うための琉球・奄美の南西諸島を前線基地とする布陣を異常なスピードで構築しつつある。これらはすべて、国会での審議も、公衆への説明もないまま、裏で決定され、実行に移されている。すべて公然たる憲法違反の行為、いやむしろ憲法無視の行為である。
岸田政権の下で、憲法9条はおろか、憲法そのものは、参照もされず、言及もされない。改憲はすでに、一切の改憲手続き抜きで、実行されたとさえ見える。ディアも運動もその既成事実に疑いの目をむけていない、かに見える。
初出:https://www.peoples-plan.org/index.php/2023/02/15/post-592/