稲正樹
自衛官が2026年4月12日に開かれた自民党大会において国歌を斉唱した本件について、自衛隊法、自衛隊法施行令に基づいて以下のように考えます。
「政治的行為の制限」を定める自衛隊法61条1項は、「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもってするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。」と規定しており、政党の党大会に出向いて行って、国歌斉唱をした行為は、特定政党のために政治的行為をしたことに該当すると思います。
自民党の党大会に出席し、党大会出席者の面前で国歌斉唱を行ったことは、出席すること自体がすでに「政治的目的の定義」に関する自衛隊法施行令86条3号の定める「特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。」の「特定の政党・・・を支持」したことを疑いの余地なく示しています。
さらに、「政治的行為の定義」に関する自衛隊法施行令87条1項1号は、「政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること。」と規定しており、自民党の党大会に出席して、国家斉唱によって自衛隊音楽隊の一員としての音楽的能力を出席者に印象づけた行為は、自衛隊法施行令87条1項1号が規定している「官職、職権その他公私の影響力を利用」したことになると考えます。
自衛隊法施行令87条2項3号は、「勤務時間外において行う場合」も自衛隊法61条1項に規定する「政治的行為」となるとしており、勤務時間の内外を問わず政治的行為の禁止を規定しています。
上記の自衛隊法61条、自衛隊法施行令86条、87条は全体的にみてみると、自衛隊員が政治的行為を行うことを厳格に禁止しており、もって自衛隊の政治的利用を防止することを立法趣旨としており、憲法が原則としている自衛隊(員)に対する文民統制の実効性を十全のものにすることを狙いとしていると思われます。
当該自衛官は所属部隊を通じて陸上自衛隊と防衛省の担当部署に対し、出席することが規則上問題ないかどうか事前に相談していたが、相談を受けた担当部署は自衛隊法が制限する政治的行為には当たらないと判断し、荒井陸幕長は今月3日に報告を受けたと報道されています。https://news.yahoo.co.jp/articles/273eac678c469ddcbb49d717e08a1d839a9ff831
そうすると自衛隊法違反にならないかを心配して事前に問い合わせた当該自衛官に対して、自衛隊法違反にはならないことを強弁して、国歌斉唱行為を実行させた自衛隊の担当部局とはどこなのか。さらに、担当部局の報告を受けながら自衛官に政治的行為違反となる国歌斉唱を行なわせた陸上自衛隊トップの判断の誤りこそ、厳しく批判されなければならないと思います。
党大会当日、この隊員との写真や「党にとって重要な場で大役を担ってくれた」と労をねぎらうコメントをXに投稿した(のちに削除)小泉防衛大臣も、自衛隊を統括する責任者として不適切な言動を示した者として、政治的責任を問われます。
自衛隊は特定政党によって政治利用されてはならない存在です。
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