
(c)宇井眞紀子
誰と、どこで、どう住まい、生きていくのかは、重要な人生の課題だが、セクシュアル・マイノリティーにとっては、ロールモデルを見つけにくいだけに死活問題だ。 今年6月に出版された『ミドルエイジ・レズビアンの住まいとカミングアウト、これまでとこれから』(現代書館)は、著者で50代のレズビアン、1級建築士でもある河智志乃さんが、「女」であること、レズビアンであることを受け入れるまでの苦悩、カミングアウトの方法と戦略、老後を見据えたパートナーとの暮らし方の模索等を、2軒の家づくりの奮闘を通して描く。
「3年前に札幌市男女共同参画センターの方に『レズビアンの大人の本はもっとないですか?』と聞かれたことが書き溜めていた文章を書籍化するきっかけになりました。女性センターにはたくさんフェミニズムの本はあるけれど、確かにレズビアンの本は少ない。まだまだ社会が女性カップルを認識していないのです」と河智さんは話す。
幼少期から性別違和があった河智さん。「男になれないことへの憎しみがあり、女の体も、課せられるジェンダー規範、性役割も嫌悪しているのに、好きになるのは女。それって異常なことなんだと当時は混乱していました」
女性嫌悪と男性嫌悪、同性愛嫌悪が自らを傷つけ、苦しい日々。職業は「女性」らしくない建築現場を選択するも、体力面で限界に突き当たる。30代に入る頃、身体的・社会的に男性として生きる人生を諦め、女性である自分を渋々受け入れ始めた。仕事も現場監督から建築設計へ。
同時に取り組んだのは、今後も1人で生きるであろう自分が老後も追い出されないための「ひとりの家」づくり。生家は「父母+子ども3人」の典型的な戸建て住宅だった。土地選びやインフラ整備に始まり、高齢期でも住める家づくりのコツもたっぷりと紹介されている。
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