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約100年前の明治・大正・昭和の時代に、結婚ではないパートナーシップを選び取った「女性」たちがいた―。「正史」からも「女性史」からも見落とされてきた関係性を育んだ女性たちの生き様を、数少ない資料や貴重な証言から鮮やかに描いた『ふたり暮らしの「女性」史』(講談社)が、今年3月に出版された。著者は、本紙1面執筆でおなじみの伊藤春奈さん。
家制度の軛が女性たちをがんじがらめにしていた時代。世界的スプリンターの人見絹枝と体操塾の仲間・藤村蝶、飛行士だった馬淵てふ子と長山きよ子等、登場する女性たちは、「女らしさ」に抗い、「女らしくない」職業を開拓し、凄まじい性差別を経験しながらも、かけがえのない存在との関係性を築いた。
「今でも家制度の名残があって、生きづらさにつながっています。ジェンダー規範が根強く、結婚すると必ず『役割』を求められる。うちの両親は仲が悪くて母はしょっちゅう泣いていたんですが、今思えば母は『役割』を求められて自分を生きられなかったんだろうなと。この本の人たちは自分を歪める『役割』に抗った人たち。昔の日本のフェミニストを調べる中で『ふたり暮らし』を知ったのですが、調べれば調べるほどに勇気をもらえました」
中にはジェンダー表現等から性的マイノリティだった可能性がある人もいる。だから題名の「女性」にはカッコを付けた。「性的マイノリティは昔からいたんだとよく言われますけど、そういう表面的な言葉でない『事実』をきちんと書きたいと思いました。事実の力はすごいので」
小学生の頃から歴史漫画の影響で、歴史が好きになった。同時に時代劇ドラマ「座頭市」の再放送を見て、「アウトローな存在」が気になるように。高校生になるとドラマの影響で幕末にハマった。
続きは本紙で...