
(c)宇井眞紀子
新米の販売が始まっているけれど価格は下がらず。今後の供給量は十分なのか…。そんな懸念を抱き、農業研究者の澤登早苗さんに話を聞いた。澤登さんは東京・多摩市の恵泉女学園大学で30年間、「生活園芸」という実習科目を有機農業で教えてきた。 昨年来の米高騰をどう考えるかと尋ねると、開口一番、「減反政策などの問題もありますが、食べる人たちの農業への無関心が大きいと思っています。米が店頭に無いと騒ぎ、値段が高いと騒ぐ。でも本当に米は高いですか。茶碗一杯のご飯とパンを比較してみてください。米は安くて当たり前ですか。みんながお金を欲しいように、農家も稼げて当然です」と、がつんと言われた。確かに、農民たちの「トラクターデモ」の時の〈農家の時給は10円〉に、みな衝撃を受けたはずだ。 国は農作物を安く供給するためと称して、補助金を出して規模拡大・機械化を進める。
「でも農家の収入は増えない。結局農機具の支払いにお金を使わなくてはならないから」
では、農家がちゃんと食べていける持続可能な農業のためには何が必要なのか。 「今の政策は『農地の集約』を掲げ、耕作者不在の農地を集めて1軒あたりの栽培面積を広くしようとしています。でも国連食糧農業機関は、小規模・家族経営で、その土地の伝統的生産方法のほうが持続可能だと明言しています。機械化して少人数で栽培面積と生産規模を大きくした農業では、生産者自身も担ってきた地域インフラの整備などが疎かになる。また人口密度が低くなるので、鳥獣が山から下りてきやすくなります」 世界の農業を知る澤登さんは、日本を含めたアジアの農業は本来豊かだと言う。
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