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今年3月に出版された『日本から考えるラテンアメリカとフェミニズム』(中南米マガジン)は、ラテンアメリカのフェミニズムを多彩な書き手が伝える画期的な一冊。編者のひとりである洲崎圭子さんは、ラテンアメリカ文学研究者として参加した。 「このテーマの研究書はこれまで少なく、女性運動は扱っても、文学や音楽や美術などどれかが欠けていました。翻訳者も少ないので、日本のフェミニズムの研究者から『注目していました』と言われたのは意外でしたね。買いやすい値段も好評です(笑)」
洲崎さんがメキシコを訪れたのは約25年前。短大卒業後に20年ほど大阪府庁に勤めた頃、夫の赴任が決まったためだ。着いてから半年後、40歳で出産。言葉の壁はあったが、子どもを大事にする文化には大いに助けられた。また多くの日本人がそうであるように、アメリカ経由の情報によって「遅れた国」という印象を持っていたため、驚きやギャップは大きかった。社会の目立つところに女性が多いことは、特に衝撃だった。 「すでに女性の国会議員が増えていましたし、知り合った文化団体や美術館の長が女性ばかりだったんです。私は公務員時代、『これは男向けの仕事や、女やからさせられへん』って言われて働いてましたから」
役所では短大卒だと昇任試験を受ける機会も乏しく、業務に必要な法律を学ぶため月100時間以上も残業をしながら日曜にはスクリーニングに通い、通信制大学を7年かけて卒業したという。
2年後に帰国すると、メキシコで苦労したスペイン語と、文化や文学を学びたいと考え、大学院へ進んだ。
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