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ふぇみんの書評

何処にいようと、りぶりあん 田中美津表現集

田中美津 著

  • 何処にいようと、りぶりあん 田中美津表現集
    • 田中美津 著
    • インパクト出版会2500円+10%
    2024年8月に逝去した、「ウーマンリブの旗手」の一人だった著者。本書は1983年に出版され、絶版していた本の待望の復刊だ。リブ運動真っ盛りの70年代から、メキシコ滞在・出産・子育てを経て帰国し鍼灸師となる80年代初めまでの著作が網羅されている。内容もリブの狼煙とも言える「便所からの解放」、「永田洋子はあたしだ」、阿部定、中絶と子殺し、女たちのコレクティブ(共同体)であり運動のハブとなった「リブ新宿センター」のこと等多岐にわたる。   血肉と化した内なる「女」を見据え、取り乱しながら、飾ることなく、真っ直ぐに家父長制を、女の性否定社会を暴き、斬り込んだ著者の言葉の切れ味は、「女性活躍」が言われ「女女格差」が顕著な今なお健在だ。「女らしさ」も「リブらしさ」も蹴散らして、「自分にかまけてナゼ悪い!」と著者は言う。とことん「自分」であることが、あらゆる権力や体制を無力化するのだと今も教え、鼓舞してくれる。ありがとう、美津さん。(R)

    障害のある人の親がものを言うということ 医療と福祉・コロナ禍・親亡き後

    児玉真美 著

    • 障害のある人の親がものを言うということ 医療と福祉・コロナ禍・親亡き後
    • 児玉真美 著
    • 生活書院1800円+10%
    重度心身障害者の親の立場で、福祉や生命倫理問題などの著作が多々ある著者。障害のある人の親が医療者など専門職に思いを伝えることの困難さを考察している。   「対等でない関係性」の中で「ものを言う」苦しさが痛いほど伝わる。こうしてほしいという希望を伝えると「やっかいな親」として問題を矮小化される。母親規範を押し付けられたり、「子離れしろ」と非難されることも。コロナ禍では医療者らの過酷さは注目されても、障害者と親たちの困難さは無視され、知的障害者や高齢者らは「口を封じられ」、命が軽視された…。  深刻な人手不足の介護現場、他者に対し無関心な社会の中で、弱者の人権がますます危うくなることに警鐘を鳴らす。しかし、親たちケアラーが「ものを言う」ことで、面会制限など改善された事例も多々挙げる。誰かの命が軽視されていないかを注視し、語り合う重要性を感じた。(ん)

    原爆と俳句

    永田浩三 著

    • 原爆と俳句
    • 永田浩三 著
    • 大月書店2800円+10%
    ヒロシマ、ナガサキ、ビキニ事件を当時に立ち戻って考えようとするとき、著者は原爆を詠んだ俳句が有効な手段となると想像できたことから本書を書いた。  1954年のビキニ事件を契機に、詩人らが「死の灰詩集」を編み、それに触発された俳人たちが動き始めた。広島、長崎と全国にも原爆を詠む俳句を公募、55年に「句集広島」と「句集長崎」が刊行され、2つの句集には一般市民の俳句を含め、約3700余の句を掲載した。句はいずれも原爆の実相に迫り、読む者の胸を打つ。「一口のトマトに笑み少年早や死骸」。また「蝉鳴くな正信ちゃんを思いだす」は弟を詠った10歳の少女の遺作だ。  本書にはさらに原爆と俳句をめぐり、九州を拠点とする俳人たち、被爆者援護法制定の活動を続けた俳人や「長野県原爆被害者の会」の運動に関わった俳人、東京で沖縄で福島で詠い続ける俳人のエピソードや思いが綴られる。原爆忌はいまや季語だ。17音の世界は深く広い。(い)
    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月800円、3カ月2400円
     6カ月4800円、1年9600円
    【 振込先 】
     郵便振替:00180-6-196455
     加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
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