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ふぇみんの書評

桐生市事件 生活保護が歪められた街で

小林美穂子、小松田健一 著

  • 桐生市事件 生活保護が歪められた街で
    • 小林美穂子、小松田健一 著
    • 地平社1800円+10%
    生活保護費は通常全額一括支給なのに、群馬県桐生市では1日1000円ずつ分割支給されていたという、明らかに違法な実態が明るみに出たのが2023年秋。本書は、「つくろい東京ファンド」で生活保護申請時の扶養照会を中止させる活動をしてきた小林さんと、東京新聞記者の小松田さんが同時進行で問題に迫った報告だ。  桐生市の福祉課は、分割した残額(保護費の半分以上)を金庫で保管していたとか、窓口にいる警察官OBが申請者を威嚇したなどと報告されている。そして他の自治体と異なりこの十数年で生活保護率が激減、特に母子世帯に著しい。権利侵害的な扶養照会も含め、これは組織的な犯罪ではないか。  記者会見で著者らは市側の言い訳を聞き、鋭く反論し、取材を進める。制度が歪められた理由は何か。国の政治や行政の責任は大きい。今も同市は謝罪も補償もしていない。どれだけ深い闇だったのか、本書を読んでほしい。これは桐生市だけの問題ではない。(三)

    「働けない」をとことん考えてみた。

    栗田隆子 著

    • 「働けない」をとことん考えてみた。
    • 栗田隆子 著
    • 平凡社 1900円+10%
     本紙連載や『ぼそぼそ声のフェミニズム』でおなじみの著者は、就職氷河期世代であり、非正規雇用、ハラスメント、うつ病罹患と休職を経験し、生活保護や障害年金等の福祉制度を利用し、働いても生活を賄えるほどではない「不安定労働者」と自らを呼ぶ。「働きたくないのか働けないのか煮え切らぬ心性」のまま、労働の周縁から「正規」労働を眼差す。  働き方の多様性や「女性活躍」が謳われても、「正規」雇用者像は今も「日本人シス異性愛男性健常者」。機械化が進んでも労働強度は上がり続け、ハラスメントは放置され、自己犠牲的で無意味な「努力」が評価される-。著者があぶり出すのは、女性非正規労働の低待遇を放置しつつ大量に(男性)非正規雇用を作り出した政策もさることながら、「正規」労働の歪みとそれに適応し他者へのヘイトを募らせる正規「労働者」の心性だ。  労働とは何か、人間の尊厳とは何か。そのあり方を根底から問い直す一冊だ。(安)

    女子プロレスの誕生 冷戦期日本の大衆文化とインターセクショナリティ

    瀬戸智子 著

    • 女子プロレスの誕生 冷戦期日本の大衆文化とインターセクショナリティ
    • 瀬戸智子 著
    • 春風社3200円+10%
    日本の女子プロレスは1948年進駐軍のキャンプでお色気とお笑いを交えた「コミック・ショウ」として始まったという。「第一次女子プロレスブーム」を経て、衰退期(60年代)までの約10年間を草創期とし、その間の「日本の女子プロレスを、冷戦時代のジェンダーと階級と人種の差異が交差しつつ、あらたに模索されていた『日本女性』像とのズレや葛藤を表出させる場としてとらえる」。  当時の新聞や雑誌、小説など様々な資料を参照し、それらの差別的表現にいちいち目を丸くする現代の読者(私)と一緒に読み解いてくれる感じ。その表現が意味するところや、時代と共にどのように変化していったのかを多角的に考察することで日本の家父長制とアメリカ型民主主義の共依存関係や、立場や時代の違いによって変化する「女子レスラー」への眼差しがみえてくる。さらにこれらが現代にどう影響しているか思索を巡らす契機にも。あとがきも興味深いので要チェック!(垣)
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