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ふぇみんの書評

〈負の遺産〉を架け橋に 文化財から問う日本社会と韓国・朝鮮

外村大、長澤裕子 著

  • 〈負の遺産〉を架け橋に 文化財から問う日本社会と韓国・朝鮮
    • 外村大、長澤裕子 著
    • ころから3600円+10%
     植民地支配や戦争の過程で持ち出された文化財の返還問題は、現在、各国で自己批判の下で取り組まれ、〈返還〉が進められている。韓国・朝鮮由来の文化財を多く所有する日本も他人事ではない。文化財・文化遺産を切り口に、返還の意義や、日韓・日朝関係を問い直す本書は貴重な一冊だ。  2012年に起きた長崎・対馬の仏像盗難事件のその後の状況、植民地時代に行われた日本人主導の古蹟保存、「在日」の歴史文化の継承問題、北朝鮮の考古学・歴史学などについても言及され、興味深い事柄が多々あった。所有権や文化財の指定をめぐる課題は多いが、各国の研究者たちの共同研究も進む。著者たちは、政府や研究者だけでなく、市民も有効活用に向けて、歩み寄り、交流を広めることを提案し、事例も提示する。  あまり注目されてこなかった〈略奪文化財〉。その搬入・搬出の歴史、文化財の価値を知ることから始め、架け橋の可能性を考えることが大事と思った。(り)

    言えないことをしたのは誰?

    さいきまこ 著

    • 言えないことをしたのは誰?
    • さいきまこ 著
    • 現代書館 各1900円+10%
     「言えないこと」とは、学校の教師による性暴力。貧困やジェンダー等社会問題を描いてきた著者が綿密な取材を元に描きあげた。  主人公は中学校の養護教諭、神尾莉生。ある日学校に匿名の少女から電話がかかる。その意味は?電話の主は?学校で行われていることは?加害者は?ー。「時限爆弾」と表現される被害の有り様や深刻さ、そして加害教師がタイプがそれぞれ違う少女の自尊心やプライド、弱みを巧みに操り、時に生徒に「恋愛」と思わせて、周囲に言えなくさせるグルーミングの手法を詳らかにする。さらには、学校現場の「特殊性」や、よりよく「支援」するために必要なこと、「支援」とは何かという真髄(被害者の力を取り戻す)、「被害者バッシング」を生み出す社会の中のジェンダー構造も、様々な登場人物の経験や観点から描かれる。  巻末には、斉藤章佳の対談、上間陽子の解説も。学校、公共施設、カフェ…あらゆる場所でこの本が手に取れるようにしたい。(隋)

    今日に抗う 過ぎ去らぬ人々

    中村一成 著

    • 今日に抗う 過ぎ去らぬ人々
    • 中村一成 著
    • 三一書房2500円+10%
     著者は元毎日新聞記者で在日3世のフリージャーナリスト。「生きるに値する世界」を求めては、抑圧され、差別と闘ってきた先人たちに、記者時代から数多く取材してきたが、限られた紙幅で活字にできなかった多くの言葉を書き遺しておかねばと思っていた。  在日高齢者無年金訴訟原告の鄭福芝さん、ウトロの語り部・金君子さん、在日朝鮮人元「慰安婦」宋神道さん、高校無償化裁判の朝高生たち、「忘れられた皇軍」の姜富中さん、どの証言も触れれば血が吹き出るかのようだ。  中村は、それらの言葉を月刊イオ誌上で連載エッセイ「在日朝鮮人を見つめて」に書き記した。時あたかも「レイシズムを思想的資源」とした第2次安倍晋三政権真っ只中、2017年から8年に渡る連載を一冊にまとめた。著者のペンにかける熱量はすさまじい。差別や偏見のない世界、平等で当たり前の人権が守られる社会を目指す人々の言葉が、どのページにも詰まっている。(公)
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