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ふぇみんの書評

「戦争ごっこ」の近現代史 児童文化と軍事思想

サビーネ・フリューシュトゥック 著 中村江里ほか 訳

    「戦争ごっこ」の近現代史 児童文化と軍事思想
  • サビーネ・フリューシュトゥック 著 中村江里ほか 訳
  • 人文書院4800円+10%
米国の大学教員で日本近現代日本文化を研究する著者は、明治維新から現在まで、子どもと遊びがどのように戦争に利用されてきたかを本書で明らかにする。  特に著者の熱を感じるのは、1990年代以降の自衛隊の広報を分析する部分である。自衛官募集で用いられているイメージ(幼児化、女性化した「萌えキャラ」)は、世界中の軍の徴募資料が強調するイメージ(軍隊が子どもを大人に、少年を男に変える)と異なると著者は指摘する。在日米軍が「日本向け」に作成した漫画『わたしたちの同盟-永続的パートナーシップ』(ネットで読める)では、絶えず交戦中の米軍と、憲法の下での自衛隊の「パートナーシップ」が、二人の子どもの「友情」として表現される。東日本大震災後にも『トモダチ作戦!』という漫画が作られた。  著者は警告する。軍隊は、軍の任務が本質的に人道的で平和なことを強調しようと子どもを利用してきた。まもなく戦争が人道主義的な任務に見えてくる、と。(雪)

カッコの多い手紙

イ・ラン、スリーク 著 吉良佳奈江 訳

  • カッコの多い手紙
  • イ・ラン、スリーク 著 吉良佳奈江 訳
  • 書肆侃侃房 2000円+10%
韓国の「フェミニストラッパー」スリークと、フェミなシンガーソングライターのイ・ランが、新型コロナ禍で誰もが人とのつながりや温かみを絶たれる中、2020年夏から始めた往復書簡をまとめた。  手紙の内容は、それぞれが飼っている猫への愛情、妊娠の恐怖、自転車に乗ると口ずさむ歌、クィアな見た目で女子トイレに入ることの困難(スリーク)、トランスジェンダー差別、自分の病のこと、タトゥー、ヴィーガンのこと…。自分の言葉や音楽を作って多くの人に届ける2人が、たった1人の「同志」に向けた言葉たちは違う味わいがある。率直で、優しくて、寄り添っていて、力強くて。フェミニストとして生きる中で弱い自分もさらけ出して受け止め合って。そして2人の手紙のようでいて、読み手にも宛てられている心地がするから、読めば読むほど心がほぐれて勇気づけられるのだ。  出版社サイトの2人のインタビューも、Youtubeでのそれぞれの演奏も必見。(そ)

関東大震災 被災者支援に動いた女たちの軌跡

浅野富美枝 著

  • 関東大震災 被災者支援に動いた女たちの軌跡
  • 浅野富美枝 著
  • 浅野富美枝 著
関東大震災直後、避難所で障子や襖で仕切りが作られていた写真に驚く。そんな100年前の経験はその後にどう引き継がれたのか。東日本大震災で被災者・支援者女性の行動を研究してきた著者が、今こそ伝えねばと記した書だ。  当時の女子学生の証言や新聞記事・史料を紐解くと女性たちの被災状況が見えてくる。雇用主の管理下にあって外出ができなかった工場労働者や遊郭の女性が集団で犠牲に。性被害も起きていたことが報道されている。被災者支援のために「愛国婦人会」など女性団体ができて、女性のニーズに合わせて動き出した。キリスト教系を含めた女性団体のネットワークはシスターフッドに繋がるけれど、底辺女性へのまなざしは欠如していた。1930年代になると、災害対応が戦時下の銃後の対応と一体化、戦時体制に利用されていった。  今後も起きるだろう大規模災害の女性支援と、一方での政治的利用に、100年間を教訓にしなければ。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月800円、3カ月2400円
 6カ月4800円、1年9600円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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