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ふぇみんの書評

地方女子たちの選択

上野千鶴子、山内マリコ 著 藤井聡子 協力

  • 地方女子たちの選択
    • 上野千鶴子、山内マリコ 著 藤井聡子 協力
    • 桂書房1800円+10%
     「消滅可能性都市」リスト上位、若手の県外流出が転入を上回り、若い女性の流出が男性の8倍という富山県。人口減少の原因は若い女性にあるとした政策が掲げられるが、真の原因と対策は何なのか?富山を出た著者2人(上野は1948年、山内は80年生まれ)が、自らの生い立ちと14人の富山の女性たち(20代~60代)の語りを通して詳らかにする。本書は、富山の出版社で、富山に戻った女性編集者が編んだ。  男尊女卑、家事・育児・介護・地域仕事は女性の肩に、同調圧力、職種の少なさ…幼少期はリーダーシップに溢れた50代女性の「今の私からは想像できんよね」の言葉に胸が詰まる。しかし、自らも富山に戻った藤井聡子が聞き書きした14人の女性たちの人生からは、苦難を乗り切る、逃げ切る覚悟や矜持が見える。「自分を殺さずにこの場所で生きる」ヒントも。まずは「『語る』を取り戻す」こと。そこで見える課題を社会に突きつけること。富山だけの問題ではない。(魂)

    私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない  韓国、女性たちの労働生活史

    京郷新聞ジェンダー企画班 著 すんみ、尹怡景 訳

    • 私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない 韓国、女性たちの労働生活史
    • 京郷新聞ジェンダー企画班 著 すんみ、尹怡景 訳
    • 大和書房2200円+10%
      女性の労働があまりにも蔑ろにされている。どれだけケア労働や非正規、自営業で働いても、一人の労働者とは見なされない。本書は韓国で多様な(とも、括りにくい)働き方をしてきた女性たちから、厳しくも豊かだった人生を聞き取り、その時代背景も記す。  「誰もが人生の物語を秘めている」「生涯働いてきた女性たちに名刺を作ってあげたかった」と書き手たちは言う。選んだ肩書は、育児専門家、食堂オーナー、長男の嫁、書道家、プロケアラー、女性農民、ボランティア、高校生、フェミニスト…。もちろん家事労働者も。登場する多くは1950年代生まれの女性と、その娘世代。働き方や時代の変化で、寝る間も惜しんで働いた母を批判した娘は、後に、自分が家父長制の加担者だったのではと悔やむ。それがまた、やりきれない。  働き続けた女性たちにリスペクトを! 母と娘をつなぐフェミニズムも魅力的だ。(み)

    戦争トラウマを生きる 語られなかった日本とアジアの戦争被害、傷ついたものがつくる平和

    蟻塚亮二、黒井秋夫 著

    • 戦争トラウマを生きる 語られなかった日本とアジアの戦争被害、傷ついたものがつくる平和
    • 蟻塚亮二、黒井秋夫 著
    • 泉町書房1800円+10%
    精神科医で、沖縄や福島で戦争・災害トラウマによるPTSDの診療を続ける蟻塚亮二さんと、「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」代表の黒井秋夫さんの対談集。父親の戦争トラウマと、その親の下で育った自身と家族の苦しみを率直に語る。戦後、戦争トラウマにより、貧困や暴力などに苦悩した家族はどれほどいただろうか。戦争体験が心に深い傷を残したことに悲しみを覚え、そのような人々を国は沈黙させケアを放棄したことに憤りを感じる。  後半は韓国編・中国編・沖縄編として、社会学者の鄭暎惠さんら3人が対談に加わる。黒井さんたちの中国への謝罪の旅に触れ、戦争の加害と被害の両面に踏み込む。抑圧されても抵抗文化のない日本市民が、戦争や暴力にどう抗うかを模索。鄭さんの「日本人は加害者と同時に国家の被害者である意識をもち」、「痛みを知る民衆同士の連帯を」に希望を感じた。(ん)
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