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ふぇみんの書評

沖縄 軍事性暴力を生み出すものは何か 基地の偏在を問う

髙良沙哉 著

  • 沖縄 軍事性暴力を生み出すものは何か 基地の偏在を問う
    • 髙良沙哉 著
    • 影書房2000円+10%
     在日米軍基地の70%を抱える沖縄では、様々な人権侵害、とりわけ深刻な、少女・女性たちへの性暴力が発生し続けている。この問題を、平時における軍事性暴力の問題と捉え、日本国憲法と日米安保体制との矛盾を突きながら、理不尽な状況に抗う道を探っているのが本書だ。  ―性差別・性暴力を容認する軍隊の本質。日本政府が日本軍「慰安婦」問題に真摯に向き合わないことと、現在の軍事性暴力を軽視する現状は地続きである。沖縄への差別があるのは、植民地主義の清算が済んでいないから―という視点は重要だ。「復帰」政策により、沖縄に基地を偏在させ、日米地位協定などの不平等性や軍隊の危険性を日本全体で共有されないことが問題と訴える。  沖縄生まれで沖縄大学教員の著者は今夏の参議院議員選挙で国会議員に。沖縄とその周辺で軍拡が加速する現在、“沖縄”問題を“日本”の問題にさせる政治を皆でつくらねば。 (ん)

    危機の時代 料理家の群像 台所からみる戦争と社会

    西川和樹 著

    • 危機の時代 料理家の群像 台所からみる戦争と社会
    • 西川和樹 著
    • 春風社3500円+10%
     戦時に、“台所”が政治的・社会的にどう関わっていったのか。田中米、香川綾、近藤とし子、東佐与子という戦中・戦後に活躍した料理家を中心に本書は展開する。料理や料理家は戦争や植民地主義とは関わりが浅いと考えられてきたが、戦争体制に入ると「料理で翼賛」など、料理家の持つ知識や技術が求められたと著者は書く。  非常時には“栄養”が注目された。料理家が時局的存在になり、国策に利用されていくが、それが個々人の“役に立っている”感覚に絡め取られていく。興味深いのは栄養研究と合理化だ。栄養研究は戦時に熱狂的に進み、兵士や労働者養成を下支えしていく。一方で戦時、食の合理化は“社会主義的活動”もあって工場の給食の改善と、(一時的だったろうが)兵站の食事改良を進める。  終章は料理とジェンダーへ広がる。“手料理”から性別役割問題へ。戦争は暮らしを破壊するという視点から、花森安治を語る。今、私たちはここから何を学ぶのか。(三)

    1945最後の秘密

    三浦英之 著

    • 1945最後の秘密
    • 三浦英之 著
    • 集英社クリエイティブ2000円+10%
    本書は、ルポライターの著者が2015年から25年にかけて取材した、戦争に関わる当事者の聞き取りなど7本の記事をまとめたものだ。  真珠湾攻撃の爆撃機に搭乗し、敗戦までただ1人生き延びた者。マダガスカル島の英艦隊を攻撃した特殊潜航艇操縦士の「日誌」。空母「赤城」でミッドウェイ海戦を体験した者…。八丈島には長大な地下壕や特攻兵器「回天」等の格納庫がいまだ残る。島からの最後の疎開船「東光丸」は米潜水艦に撃沈され149人が犠牲となったという。  2011年夏、101歳の元満州国官僚から「満州事変の目撃談」と題する手紙が届く。戦前の満州に生まれ、官僚として諜報業務に携わった男性の半生が綴られ、満州国最後の「極秘計画」が明かされる。  本書には著者が後世に伝えようとした、当事者の記憶や声が満ちている。そこから知られざる事実が詳細に浮かび上がる。戦争への道を歩もうとする今、重要なのは、事実を正確に後世に引き継ぐことだ。(ね)
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