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ふぇみんの書評

パレスチナ/イスラエルの〈いま〉を知るための24章

鈴木啓之、児玉恵美 編著

  • パレスチナ/イスラエルの〈いま〉を知るための24章
    • 鈴木啓之、児玉恵美 編著
    • 明石書店2000円+10%
    第 1 章「ガザの風景」の、〈街道沿いの果樹園や海に沈む夕陽が美しい〉という記述から、今のガザに思いを巡らせた。度重なるジェノサイドで失われたパレスチナの日常を、中長期的視座で研究者や NGO 職員が記録する書。「パレスチナ解放機構」が難民キャンプで影響力を強め、なぜ若者が抵抗運動に身を投じていくのか。抵抗と統治機能を持つハマスとは。イスラエル国籍のパレスチナ人という問題も奥深い。国際 NGO の活動は期待されている半面、占領という根本的問題を解決できないジレンマを抱えている…。網羅的な切り口でパレスチナ/イスラエルが語られる。 キブツ(イスラエル人の共同体)はイスラエルの国土防衛の最前線であること。抵抗の一形態である演劇や文学の可能性、BDS 運動の意義、人々の心と行動を動かす映画の影響力など、コラムも充実。パレスチナ問題を理解し、さらに読み進める基礎になるだろう。私たちの闘い方を考える一助にも。(三)

    花と夢

    ツェリン・ヤンキー 著 星泉 訳

    • 花と夢
    • ツェリン・ヤンキー 著 星泉 訳
    • 春秋社2400円+10%
    中国チベット自治区出身の女性作家がチベット語で書いた初の長編小説。舞台は2000 年代のラサ。場末のアパートで肩を寄せ合って暮らす4 人の女性(3 人チベット人、 1人漢人)は、ナイトクラブ「ばら」で、それぞれ花の名前で呼ばれ、男たちに体と愛嬌と媚びを売る。彼女たちはなぜここで働くのか。やがて「菜の花」の身に異変が-。 農村部の貧困と格差、家父長制と女性蔑視、家族の不和…構造の歪みが彼女たちを発展著しいラサに追いやったが、そこで経験するのは労働搾取、レイプ、パワハラ、ストーカー…。仏教信仰が暮らしに根付くこの地域では、過酷な状況すら「前世の悪業」「業の深さ」と彼女ら自身も信じ、純潔信仰も表現されているが、本書を一貫するのは彼女らの隣に立とうとする著者の温かく力強いまなざし。セックスワーカーへの暴力や差別、仕事環境の劣悪さ、男たちの卑劣さに共に怒るのだ。彼女らの、そして彼女らと著者の、シスターフッドの物語。(ム)

    大邱の敵産家屋 地域コミュニティと市民運動

    松井理恵 著

    • 大邱の敵産家屋 地域コミュニティと市民運動
    • 松井理恵 著
    • 共和国2700円+10%
     韓国大邱(テグ)市の三徳洞には、植民地時代の日本式家屋(敵産家屋)が残る。本書はフィールドワークを通して、現在も利用されている敵産家屋について論じたもの。 大邱では2000 年代初め、市民団体が中心になり、使い続けられている敵産家屋に注目し、保存しようとする活動が始まった。植民地主義への抵抗と都市の歴史も考察しながら、修繕・補修を重ね、コミュニティや運動の拠点にしていく活動。その1 つに「セウム日本軍『慰安婦』歴史館」もある。「敵産家屋に手を加え、使いつづけることによって、都市にはびこる新自由主 義のグローバリズムに姿を変えた日本帝国主義の残滓を解体し、内部から都市を作り変えようとする試みなのかもしれない」という著者の言葉に、市民主体の町作りの重要性と様々な可能性を感じた。三徳洞で育った作家、森崎和江の『慶州は母の呼び声』の韓国語版翻訳に関わった著者が、森崎作品から植民地の支配/被支配関係を洞察する章も興味深い。(よ)
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