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ふぇみんの書評

ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援

パボ 著 安發明子 訳

  • ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援
    • パボ 著 安發明子 訳
    • サウザンブックス社3000円+10%
     フランス発の本書コミックの著者で登場人物の1人であるパボは、ソーシャルワーカーの一種の国家資格である「エデュケーター」。私たちに耳慣れないこの支援職は、「在宅教育支援」といって、親か子どもに障害があったり、両親間に葛藤がある家庭に入り、親と子をまるごと支え関係性の調整等に当たる。フランスには子ども専門裁判官がいるのも特徴だ。  本書は、パボと、精神疾患の母と二人暮らしの8歳のターラとのやり取りをコミカルに描くことで、エデュケーターの仕事や課題、不安定な家庭に生きる子どもたちの本音と現実、そんな子どもたちが持つパワーを描く。特に、ターラの描写がいい。大人びて冷静、鋭い観察眼を持つが、想像上のオウムに愚痴を聞いてもらったりパボとのコミュニケーションで均衡を保つ。日本にもこんなシステムがあったら…。いろいろ知りたくなること間違いなし。(孟)

    テヘランのすてきな女

    金井真紀 著

    • テヘランのすてきな女
    • 金井真紀 著
    • 晶文社1800円+10%
     好奇心と観察力バツグンの著者が、女子相撲を見にイランへ行く企画を立てた。しかしイランでは「反スカーフデモ」のレジスタンスが今も後を引く。ならば、女性たちがどう生きているのか、いろいろ聞いちゃおう、とできたのが本書。著者によるイラストが一人一人の意思を捉えていてステキだ。  スカーフはどう巻く?とおたおたしていた著者は、2人の肝の据わった通訳に会う。フェミニストの弁護士からはレイプ裁判や死刑について聞き、トランスジェンダーとレズビアンの3人から強い覚悟が滲む言葉を引き出す。もちろん相撲も登場。自分を表現できるスポーツを求めたと女性たちは言う。そして風呂好きの著者の真骨頂、ハンマームへ。女性だけの空間は心地よさそう。美容整形や豊胸手術のこと、美容院で聞いた家族や離婚のこと。女性たちはパワフルだ。  スカーフやチャドルへの考え方や生き方は想像以上に幅がある。フェミニストも大勢いる。豊かな話をぜひ読んで。(三)

    コロナ「留め置き死」 医療を受けられなかった人たち

    横山壽一、井上ひろみ、中村暁、松本隆浩 編

    • コロナ「留め置き死」 医療を受けられなかった人たち
    • 横山壽一、井上ひろみ、中村暁、松本隆浩 編
    • 旬報社1700円+10%
     コロナの感染拡大で、必要な医療を受けられず亡くなった人々が大勢いる。本書は、コロナに罹患した高齢・障害の社会施設入所者が、生命の危機にあっても入院させてもらえず、施設療養を余儀なくされ、生命を落とした「留め置き死」にフォーカス。京都府の事例や実態調査などから、この問題に早くから気づいた医療・介護・障害福祉に関わる仕事や活動をする11人が論じている。  「延命治療を希望していない」ことや「障害がある」という理由で、入院拒否をされた事例が多々あった。高齢者・障害者への差別・排除が行われていたことに愕然とする。「留め置き死」の背景として、低診療報酬政策や医療従事者数抑制、公立・公的医療機関縮小などの政策により、「医療逼迫」が起きたことも重視。「留め置き死」は全国で起きていたはずだが、政府は検証さえしていない。医療・介護・障害福祉の脆弱さをあぶりだし、優生思想や人権意識を人々に問う重く貴重な記録だ。(う)
    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月800円、3カ月2400円
     6カ月4800円、1年9600円
    【 振込先 】
     郵便振替:00180-6-196455
     加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
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