WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

家父長制の起源 男たちはいかにして支配者になったのか

アンジェラ・サイニー 著 道本美穂 訳

  • 家父長制の起源 男たちはいかにして支配者になったのか
    • アンジェラ・サイニー 著 道本美穂 訳
    • 集英社2300円+10%
    英国の科学ジャーナリストである著者が、古今東西を旅するように女性抑圧のシステム「家父長制」の歴史をひもとく。客観的な知識のように見える、思い込みの数々。家父長制の多くが、各文化における権力構造や既存の不平等な体制と結びついて機能することを明らかにした。  古代の記録には、自立した働く女性や女性支配者、女性戦士の存在が明記。メソポタミア文明では、結婚・離婚・不貞を巡る法律は時代が進むほど女性に厳しくなり、女性の地位が低下していく。現代の資本主義はジェンダー格差を拡大。宗教や伝統は男性優位の考え方を後押しするように利用され続ける。  時代とともに移り変わる人々の生活を眺めると、ジェンダー規範の不安定さがわかる。著者は、家父長的権力による悪影響を正そうとするなら、「互いを思いやる人間らしい心を育むしか道はない」と断言。家父長制を解体する一歩は、私たちの日常から始まるのかもしれない。(春)

    女性たちの韓国近現代史 開国から「キム・ジヨン」まで

    崔誠姫 著

    • 女性たちの韓国近現代史 開国から「キム・ジヨン」まで
    • 崔誠姫 著
    • 慶應義塾大学出版会2600円+10%
     歴史から見えなくなっていた朝鮮半島の女性たちを「可視化」し、韓国(朝鮮)近現代史をジェンダー視点で捉え直した本書。朝鮮王朝末期の高宗の王妃、明成皇后(閔妃)の再評価はよく聞くが、側室(厳妃)も女子教育に力を入れるなど活躍していたことは知らなかった。文学者で「親日派」の烙印を押された李光洙と結婚した許英粛は、朝鮮初の女性産科開業医だった。夫の陰に隠れるなどして、正当に評価されていなかった女性たちも登場。また、日本による植民地支配、朝鮮戦争などで苦労を重ね、帝国主義や家父長制を批判し、民主化や女性の権利を求めて多くの女性たちが闘ってきたことが、現代の#MeToo運動につながり、文学や映画などの文化にも豊かに反映されたことがよくわかる。  著者はドラマ「虎に翼」の、朝鮮学生考証/朝鮮文化考証を担当した大学教員。関連の映画・ドラマなどもコラムで紹介されていて、韓国近現代史や日本との関係を楽しく学べるテキストだ。(く)

    婦人相談員物語 その証言から女たちの歴史(ハーストーリー)を紡ぐ

    ジュディス・L・ハーマン 著 阿部大樹 訳

    • 婦人相談員物語 その証言から女たちの歴史(ハーストーリー)を紡ぐ
    • 村本邦子、松本周子 著
    • 国書刊行会2700円+10%
     DVや性暴力被害など深刻な相談を受ける女性相談員の仕事を知ってほしいと、研究者と相談員の著者が記した書。関連の女性史、相談員24人からの聞き書き、昨年施行された女性支援新法について、の3部構成。  1部では、「からゆきさん」や「慰安婦」から売春防止法制定と、婦人保護事業が開始し婦人相談員が誕生したこと、DV法などを紐解く。2部では困難な相談の成果と課題が語られる。女性のことと軽んじられ、「電話番だから(難しくない)」と勧められて仕事に就くと、現実の壁にぶち当たった。徹底的な学びと経験で職業意識を強めていったが、それが会計年度任用職員になったことでやる気が削がれ、守秘義務が課されて経験の蓄積が途切れると訴える声が多い。ただ、深刻なLGBTの相談は見えてこない。  相談者が安心して相談できるためには、女性相談支援員の研修と身分保障こそ必要だ。新法にはまだ不十分さも多いと感じた。(三)
    【 新聞代 】(送料込み)
     1カ月800円、3カ月2400円
     6カ月4800円、1年9600円
    【 振込先 】
     郵便振替:00180-6-196455
     加入者名:一般社団法人婦人民主クラブ
    このページのTOPへ