
(c)落合由利子
企画を出版社に持ち込んで本を作り、世に送りだす…フリーランス編集者、北川直実さんの仕事だ。テーマは戦争や公害など、負の記憶と継承に関わるものが多い。 「今、何が求められているのかをキャッチし、これだという自分の直感を信じて本を作ってきました。同時に、後に価値が出るものを記録し次世代に残すことは、本の大事な役割。声なき声をすくい取るのも、どこにも属さない『小さなメディア』だからできることだと思っています」
大学院では文化人類学を専攻。修了後、目指したのは羽田澄子さんのようなドキュメンタリー映画監督になることだった。岩波映画製作所の最終面接まで残ったが、その年の採用はなし。結局、広告制作会社に就職し、ライター・編集者として航空会社の機内誌に携わった。時はバブル景気に沸く1980年代。海外取材で、多様な世界に刺激を受けた。チーフエディターを任されたが、広告の世界でやっていくことが自分の最終目標なのかという疑問が湧く一方、社会問題への関心があり、91年に独立。2人の子育てをしながら、雑誌・書籍の執筆・編集をこなした。
「転機は、2001年。戦争の爪跡が残るカンボジアの村に学校を作るプロジェクトがあり、同行したんです。置き去りにされた地雷を踏んで脚を失ってしまったのに明るく懸命に生きる子どもたちに会い、衝撃を受けました」 帰国した翌月、アメリカで9・11「同時多発テロ事件」、アフガニスタンへの報復戦争が起きた。大戦が相次いだ20世紀が終わり、戦争のない21世紀を期待したが、裏切られた。戦争は現在進行形だ。同時代を生きる日本の子どもたちにこの現実を知らせたいと、子ども向けの『難民と地雷』(草土文化)を計3冊上梓。自らの企画で、ゼロから本を作ることに取り憑かれた。
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