
(c)宇井眞紀子
オペラ『カルメン』『蝶々夫人』などへの出演で知られる、メゾソプラノ歌手の鳥木弥生さん。落ち着いたトーンのなかに籠もる力強さが、観客を物語に引き込んでゆく。 音楽大学卒業後、数々の巨匠に才能を見出され、東欧、ヨーロッパを舞台に歌ってきた。「言葉の壁以上に、手強かったのは意識の壁でした。常にYESかNOかを求められ、言えないと何も始まらないんです」
鳥木さんは苦労して、自分らしさを築いていく。 「知らないことばかりの私には、知る喜びがありましたね。子どもの頃から『アモーレ(愛)』という言葉を知っている人より、きょうアモーレを知った私のほうが、その感動までも表すことができるんだと」
鳥木さんは、石川県七尾市の生まれで、三姉妹の末っ子。出生時には男の子を期待され、大輔という名が用意されていたという。熊本に住む母方の祖母が「3月生まれだから弥生でよか」とつけてくれた。女だからというレッテル貼りに子どもの頃から反発し、半ズボンにショートヘアで過ごし、自分を「ボク」と呼んだ。「将来の夢を考えたとき、女流作家、女流棋士、女性社員などいちいち女がつくのはイヤだなと思って。何もつかないのがメゾソプラノ歌手でした」
熊本出身で阿蘇山のバスガイドをしていた母から歌を習い、歌謡曲、演歌、シャンソンなどを歌って育った。金沢の高校の音楽コースから武蔵野音楽大学に。東京・江古田の商店街でロシアのメゾソプラノ歌手・エレーナ・オブラスツォワに声をかけられた。
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