(c)謝花直美
沖縄県が日本に「復帰」後の観光ブームで、1980年代頃まで土産品に留まらず、県内向けには贈答品として人気を博した「琉球人形」。一世を風靡し、県民なら誰でも知っているが、いまや「絶滅危惧種」になりつつある琉球人形に光をあてるのが、アーティストのひがれおさん。新たな魅力を見出した作品づくりを続ける。
華やかな琉装姿の琉球人形が、ハロウィーン仮装したり、パレスチナの旗を手に持つ。土産物の琉球人形をベースにしたユニークな作品に加えて、3Dプリンターで手のひらに乗る琉球人形もつくった。琉球人形にプレゼントする小さな琉球人形だ。ユーモアをまといながら、さまざまなメッセージを発する作品をつくる。今年2月には個展「ひがれおの琉球人形あつめ」を北中城村のギャラリーで開いた。琉球人形と、今向き合う理由は何だろうか。
幼い頃から少年漫画や地元で映る米軍放送のアニメに夢中になり、「絵を描くのが好き」だった。高校で進んだのは進学校の美術コース。学校全体では東京の大学に進む生徒が多かった中で、ひがれおさんは秋田公立美術大学に進学。「金銭的なこともあったが、夜行バスでも東京にいける気軽さが気に入った」 実利的な理由で選んだ秋田だったが、歴史や文化にふれ、東日本大震災後の東北地方を考える機会となった。
「秋田は朝鮮人徴用工の痕跡があったり、アイヌ由来の地名があったり。大学には社会問題をテーマに制作する教員がいた。そうした学びの中で、1903年の大阪内国博覧会の人類館では沖縄の人もアイヌの人を差別したことを知った」。進学という目的で県外へ出ることが必須と思っていたが、それは沖縄を相対化する機会ともなった。
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