(c)宇井眞紀子
埼玉県の川口市や蕨市は外国籍人口が多く、クルド人の集住地域としても知られる。入管法改定が国会で審議された2023年、在日クルド人が国会に参考人招致されて窮状を訴えた頃から、この地域でクルド人を標的とするヘイト・デモや街宣が激化した。 「地元にヘイトがやってきた」。会社員の中島麻由子さんは矢も楯もたまらず、現場で出会った同世代の3人で、「埼玉から差別をなくす会」を立ち上げることに。それが24年の3月だった。
「昔から正義感は強いほうだったし、人権問題にも敏感だったので、何とかしなきゃ、って。でも『運動』などしたことのない3人なのでハードルは高かったです。要望を出すといっても、どこへいけばいいの?から始まって…」 ともあれロビー活動に的を絞り、24年4月、県や県警に質問状を出し、県庁で記者会見を開いた。求めるのは、神奈川県川崎市を先例とする、刑事罰を科す差別禁止条例の制定だ。
「狼煙をあげたことで、いろんな方が声をかけてくださって。条例の細部は『外国人人権法連絡会』をはじめとする専門家の方々がサポートしてくださったり。それまでは神奈川新聞くらいしか取り上げてこなかった、地域のヘイトの問題を、市民が要望しているからと、地元紙などが取り上げるようになって」
しかし行政の反応は鈍かった。川口市では、「ヘイトスピーチは把握していない、だから対処のしようがない」と他人事のような対応ぶり。 「そこで実態をまとめた資料を作りました。ヘイト・デモの現場映像を編集し、QRコードを入れて見てもらえるようにしたり、SNS上のヘイトもまとめたし、過去のヘイト・デモを集計してグラフにしたり。埼玉県戸田市の河合悠祐市議のような、選挙に名を借りてヘイトスピーチをする候補が増えたので、そうした選挙関連も幅広く多様に、資料にしています」
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