(c)落合由利子
居心地の良いカフェにも見える「ゆずりは」には、安心して子ども時代を生きられなかった、かつての子どもたちが相談にやってくる。社会的養護施設で育った人も、制度からこぼれて何とか生きてきた人もいる。「どうやって家から逃げたらいい?」「アパートが借りられない」「妊娠5カ月になってしまった」 彼らに向き合うのは、所長の高橋亜美さんを含め7人。高橋さん自身にも子ども時代のつらい記憶がある。
「小学生の頃、父親から卓球の訓練で暴力を受けていて、当時は虐待という言葉もなく、ただつらく苦しく、自分が死ぬか父に死んでもらうしか逃げ道はない、ああこのまま交通事故にあえばいいのにとよく考えてました」 そのうち万引をしたり、鳩に石を投げるように。 「何度も捕まり、悪いとわかっていても手が伸びてしまうのは物欲が強いから、悪い子だからと思いこみ、しんどさを隠し、ひねくれることで強くなろうとしていました」 それでも小学6年の夏、限界が来た。ゾンビのように生気がなくなり、卓球をやめたいと父に訴えると、聞いてもらえた。抑圧と支配の暴力的な時間がなくなり、気がつくと万引は止んでいた。
そんな経緯もあり、福祉系大学へ。ところが教員たちの言葉が全く響かない。 「福祉や支援はこうあるべきと、正しさを押し付けられるようで、先生につっかかってばかり」。気持ちをくれたのは自立援助ホーム(家庭の事情で働かざるを得なくなった15~20歳が暮らす施設)。 「ああしなさい、これ勉強しなさいではなく、まず私がどういう人間かを職員も知ろうとしてくれた。対等に向き合ってもらえ、あなたはどう思うの、とたくさん問いを投げかけられました」
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