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詩人の高良留美子さんが女性の文化創造者を励ますために創設し、2020年から女性史研究者の米田佐代子さん(本紙17年7月5日号1面)が引き継いだ「女性文化賞」。24年は、石川県珠洲市在住で、19年に『菜の花の沖縄日記』を出版し、珠洲で「湯宿さか本」を経営する坂本菜の花さんに贈られ、11月に記念の会が東京で開かれた。
菜の花さんが暮らす能登半島は、今年、未曾有の大地震と豪雨に見舞われた。宿に大きな被害がなかったため、避難所に行きづらい近隣の身体が不自由な人や認知症の被災者を一時的に受け入れた。 「この時期に女性文化賞をいただくお話は能登へのエールだと思っています。副賞は、地震の被害で建物が解体された更地に植樹する、『木からつくる町プロジェクト(仮)』のために使いたいと思っています」と語った。 菜の花さんが沖縄で人と出会いながら築いた自己認識と、他者理解の精神を育てた行動力を賞に選んだ米田さんも、地元の長野県で木を植えている。菜の花さんの発案に喜んだ
中学校の修学旅行で訪れた沖縄をもっと知りたいと、15歳で那覇の無認可学校「珊瑚舎スコーレ」高等部に進学。沖縄戦で学校に通う機会を失ったおじい・おばあや、米軍基地に反対する人など多様な立場の人々と話し、考えたことを在学中から新聞に連載して『菜の花の沖縄日記』として出版した。瑞々しい文章からは、自分が正しいと思ったことを他人に押しつけない、意見が異なる人と関わることの大切さ、が伝わる。 高等部卒業後は珠洲市に戻り、両親が経営する宿の手伝いを始めた(21年からは経営者に)。コロナ禍を経て、身体の障がいが重くなった父親に代わり、多忙な日々を過ごした。宿の運営が次第に日常に戻った時に起きたのが、地震と豪雨だった。
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