(c)落合由利子
「現代の奴隷」という言葉にドキリとした。人身取引や借金による束縛、強制労働などの被害者である「奴隷」は今、世界に5千万人以上いるという。『現代の奴隷 身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること』(モニーク・ヴィラ著 英治出版)などの翻訳者で、「ノット・フォー・セール・ジャパン」(以下、NFSJ)の代表の山岡万里子さんは人身取引をなくす活動に尽力している。
「子どもの頃から読書も作文も好きで、高校時代に米国に留学し、自分はきっと翻訳者に向いていると思っていた」という山岡さん。大学卒業後は大手旅行会社の子会社に勤め、国際会議の運営や翻訳の業務につく。第1子の出産を機に退職し、第2子出産後に夫の米国留学に家族全員で同行。翻訳の勉強を通信教育で続け、帰国後は雑誌や書籍の部分翻訳の仕事を得た。
「その後、翻訳の勉強を本格的にしたくなり、翻訳者として有名な東江一紀先生の門下生になりました。先生のお宅で毎月勉強会が開かれ鍛えられましたよ。先生は10年前、62歳で亡くなられたのですが、今でも仲間と勉強会を続けています」 厳しかったが面倒見がよかった師匠から、編集者らを紹介され、数々の翻訳を手がけた。
そうしてある日、版権フリーの新刊洋書を展示するライブラリーで、一冊の本と出会う。 「その本、薄かったんですよ(笑)。読みやすそうだし、副題(地球規模での奴隷売買の復活)を見て、えっ、奴隷?って驚いて、借りちゃいました」 その本が後に山岡さんの翻訳で出版される『告発・現代の人身売買 奴隷にされる女性と子ども』(デイヴィッド・バットストーン著 朝日新聞出版)だ。
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