WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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インタビュー

見えづらい部落差別と日常を綴った

上川多実さん

  • 2024.7.25
  • 聞き手…柏原登希子
  • 撮影…落合由利子

>上川多実さん

(c)落合由利子

「夕飯、何する?」と同じトーンで

部落差別は昔のこと。話題にすると〈寝た子〉を起こす―?  今年2月『〈寝た子〉なんているの? 見えづらい部落差別と私の日常』(里山社)が刊行された。著者の上川多実さんは、関西の部落出身で部落解放運動に携わる両親のもと、東京の部落でない地域で生まれ育った。   本は、幼少期から、シングルマザーとして2人の子どもを育てる今までの日常を綴ったエッセイ。家の外では多くの人が部落のことを知らない環境の中で、上川さんがどのように部落ルーツの自分と家族、社会を捉え、心の痛みや傷つきを見つめて掬い出し、自分の声と歩みを見出したかが丁寧に描かれる。

 

 「小さい頃から理不尽なことが嫌いな子どもだったんです。おそらく原点は、年子の妹がいたこと(笑)。産んでって頼んでないし、大して年も変わらないのにお姉ちゃんだから我慢しろって言われる。こんなのおかしい!って憤ってました」  でも自分が感じた「理不尽なこと」には怒れても、まだ自分ごとになっていない「部落問題」には怒れなかった。小学校の卒業式で、両親が身分制に抗う意味で反対する「君が代」を歌う時に着席することは、「家でそうすべきと教え込まれてきたから、しなければいけないことという意識だった。部落差別とたたかえなければ、愛してもらえないんじゃないかと不安があったんです」

子どもの頃から家の外では部落に関する言葉が通じず、「翻訳」が必要だった。学校では同和教育がされず、部落のことは家の一歩外に出たらほとんど誰も知らない。しかし父には、結婚相手に部落の身内とは絶縁するよう言われた結果、音信不通になった妹がおり、近所の企業では就職差別があった。友人らの遊びや何気ない会話に「穢多・非人」や「君が代」が無邪気に出てくる日々。なのに、高校の教員には「東京には部落差別はない」とまで言われた。部落差別の現実を見聞きするにもかかわらず、あたかも「ない」ものとされている社会に理不尽さを感じ、否応なしに自分ごとになっていった。

        続きは本紙で...


かみかわ たみ

1980年東京都生まれ。佐藤真監督の下でドキュメンタリー映画制作を学び、2000年に両親と自らの葛藤を写したドキュメンタリー『ふつうの家』を発表。情報発信サイト「BURAKU HERITAGE」の運営人の一人。被差別部落地名公開裁判の原告の一人でもある。

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