(c)落合由利子
2000年12月に開催された「女性国際戦犯法廷」(以下、法廷)は、アジアの女性たちや人権団体が第2次大戦中に日本軍が行った性奴隷制による人権侵害の実態解明や責任追及を目的として、当時の国際法を基に裁いた画期的な法廷だった。その法廷の共同代表の一人、フィリピン出身のインダイ・サホールさんが14年ぶりに来日した。 「現在、法廷の記録の出版と、ウェブサイト立ち上げの準備中です。今回の来日は『慰安婦』女性の正義を求める運動を共にした人々と会い、対話することが目的です。法廷から23年。国境を越えたフェミニスト運動だった法廷と、それをアジアの女性たちが率いたことに改めて光を当てたい」
インダイさんが「慰安婦」問題と関わるようになったのは、1992年、韓国・ソウルで行われたアジアの人身売買に関する会議でのこと。 「前年に、金学順さんが韓国で初めて日本軍性奴隷制の被害者だったと証言していました。フィリピンも日本軍が侵攻していたのだから同じ被害があったはず、と韓国の女性活動家から助言され、帰国後、ラジオで『戦争中に日本軍からの性暴力を受けた人は私たちに電話して』と呼びかけたのが、『慰安婦』被害者を探す活動の始まりでした」。そしてマリア・ロサ・ヘンソンさんが名乗り出た。
その後アジア各地で、性奴隷制の被害に遭った女性たちの証言が続く。被害女性たちが支援者たちと日本で日本政府に対して裁判を起こしていく。しかし、国家無答責や除斥期間の経過などを理由に敗訴が続いた。どうしたらこの先の運動を展開できるか。「当時、私は国際刑事裁判所の設立に携わっており、国際刑事裁判を行うヒントを得ました」。国際法の権威の専門家を集めて国際法廷を立ち上げようと準備を始め、加害国代表として日本の故・松井やよりさん(VAWW-NET Japan)、被害国代表として韓国の尹貞玉さん(韓国挺身隊問題対策協議会)、国際社会代表としてインダイさん(アジアの女性人権センター)が共同代表になった。
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