(c)落合由利子
2020年春、神奈川県鎌倉市に日本最大の難民シェルターが誕生した。運営するNPO法人「アルペなんみんセンター」は、同センター理事・事務局長の有川憲治さんが立ち上げた団体で、イエズス会修道院を活用している。神父が高齢化し閉鎖すると聞いて相談すると無料で借りることができた。 23年には東京都小金井市に第2のセンターができ、緊急保護から定住支援まで包括的に支援する両センターで、26カ国、77人を受け入れてきた。
小金井センターも、高い木々に囲まれた修道院の中にある。 「ここは鎌倉とは別の女子修道会ですが、やはりシスターが高齢化して活動を縮小することになり、オファーをいただいたのです。私たちの鎌倉での活動をご存じで、同じようなことがここでできないだろうかと」 そう語るのは、センター長の松浦由佳子さん。こうしてシスターが暮らす修道院の一隅に女性と子どものためのシェルターができた。松浦さんも院内の簡素な部屋に住み、入所者と寝食を共にしている。この1年は試行錯誤だったというが、昨年末、難民支援の意義を再認識させられるうれしい出来事があった。
「ミャンマー出身の一家に小学生のK君がいて、その同級生のママから手紙が届いたんです。『学校に行きたがらない息子が、K君となら行けると言います。朝、そちらにうかがって一緒に通学させてもらえませんか』と。K君は日本の同調圧力など気にしない、自由でおおらかな子。彼とならありのままでいられると感じたのでしょう。多様性が社会にもたらす可能性を実感する体験でした」
難民を救うことで、じつは日本に生きる私たちが救われる。 「日本社会は病んでいます。倒れた人がいても淡々と通り過ぎたり。他の国ならみんなが駆け寄るのに…。生きづらさを抱える人も増え続けるこの社会はおかしい、と思うことがよくあります」
続きは本紙で...