(c)落合由利子
この2、3年、美術系WEBメディア「Tokyo Art Beat」で目に留まる記事を追っていたら、2021年に話題を呼んだ『美術手帖』の特集「女性たちの美術史」を編集した福島夏子さんの記事だと気づいた。 「ジェンダーの視点で『美術手帖』を特集したのは、14年のBL特集あたりから。“女向け”と軽く扱われるサブカルチャーに光をあて、表現として捉え直したかったんです。社会学の研究者や女性の書き手が多い分野なので、特集を機にフェミニズム批評やクイアリーディングの本も読むようになりました」
中学生の頃に授業で世界史に興味を持ってから、世界史と美術への関心を深めてきた。 「教科書を眺めているだけで時代のダイナミックな流れや因果関係が浮かびあがり、それを整理すると人間の営みが見えてくるのがおもしろくて。そのなかで絵画などの作品が残ってきたことに強く惹かれました」 大学では西洋美術史を専攻。卒業後は出版社で音楽雑誌を担当したが、“マッチョ”な文化に染まり、ジェンダーの問題意識を持てずにいたという。
視覚に訴える美術系WEBメディアは、SNSとの関係などで苦労がありそうだ。 「公平性や平等性、加害/被害に関わる議論がSNSでたびたび起きます。そこから学ぶことも大きいですが、すべてに対してクリーンであろうとすると、アートなどの表現は本末転倒になりかねない。どんな表現でも暴力性を孕むし、思いもよらない伝わり方をすることはあるからです。メディアとしても気を遣うところですが、1冊で完結する雑誌の特集とは違い、WEBは記事をひとつずつ出していく継続性が強みなので、足りないところは次で補える。取り組み続けるつもりで編集しています」
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