2021年、ネットのオークションで私が個人的に入手した「関東大震災絵巻」の中に、リアルな朝鮮人虐殺場面が入っていた。震災から100年目にはじめて出現したわけで、これまで私が確認した描かれた虐殺画は、児童作品、河目悌二、萱原白洞に続いて4人目になる。
この絵巻の作者の「淇谷」という雅号の画家は、福島県西白河郡泉﨑村出身の大原彌一という小学校の教員で画家であるが、なぜ、この絵巻を創作することになったのか。どうして表に出てこなかったのか、今なぜ出てきたのか、まだ未解明となっている。
巻物は2本になっており、両方合わせると30㍍をこえる大作で、1巻目の最後の方に、朝鮮人虐殺の場面が詳細に描かれていた。虐殺行為は、警察官、軍人、それに地元の自警団らが官民一体となって行われたことを示しており、まさに歴史的な記録画としても評価できる絵巻である。淇谷はなぜこの場面をあえて絵巻にとりこんだのだろうか。絵巻の中にある「自序」には、概略次のように記している。
「この惨禍を経験しなかった人々に、この絵巻を通して〝省慮の念〟を促したい」と。つまり深く反省し、熟慮ある行動をとることを100年後の私たちに求めている。 文●新井勝紘
*本絵巻は、「関東大震災100年―隠蔽された朝鮮人虐殺」展(~12月24日)、東京・高麗博物館(新大久保)にて展示中。詳細は同館ウェブサイトで。
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