(c)落合由利子
「#MeTooをするまで、私はフェミニストではありませんでした」と弦子さんは言う。 性暴力被害者が経験を告白する#MeToo運動は、2017年に米・ハリウッドに端を発し、SNSを中心に世界中を席巻した。弦子さんは、18年に中国で#MeTooをし、国内外で大きな反響を呼んだ。「弦子」は活動上のニックネームだ。
現在中国では、おおっぴらにフェミニズムの活動をすることが難しくなっており、弦子さんのSNS上のアカウントも削除されている。それでも物静かな佇まいの中で、凛として、弦子さんは言葉を紡ぎ、フェミニストとして力強く歩んでいる。
14年、当時21歳の弦子さんはインターンとして実習をしていた中国国営テレビ局で、国民的に有名な司会者・朱軍からセクハラ被害に遭った。それまでフェミニズムに接したことのなかった弦子さんだが、大学で「女性主義映画」の授業を担当していた教員が、セクハラのことを教えてくれたことを思い出し、翌日に警察に通報した。しかし最終的に警察と大学は、弦子さんに訴えることを諦めさせた。
18年、幼馴染の友人がSNS上で過去のレイプ被害を告白した。「すごく勇気のある、意義のあることだと友人に伝えたくて、自分のセクハラ被害をSNS上に書きました」 弦子さんの文章はまたたく間に大きな話題となった。が、国内メディアが取材にきても、後に掲載できないと伝えられたり、掲載されてもすぐに削除された。そして朱軍が名誉毀損で弦子さんを訴えると、弦子さんも反訴の形で朱軍を訴えた。
続きは本紙で...