(c)落合由利子
ふしみみさをさんは、英語とフランス語の絵本の翻訳者だ。「うんちっち」としか話さないうさぎの男の子が主人公の『うんちっち』(あすなろ書房)や、小鳥の女の子がとびきり大きなうそをつきに出かけていく物語『リゼッテうそをつきにいく』(クレヨンハウス)など、予定調和的でない、個性的な絵本をみずから探し出し、翻訳・紹介してきた。最近では、古事記を再話した「日本の神話絵本」シリーズ(岩崎書店、ポール・コックス絵)など創作もおこない、手がけた作品の数は200冊以上にものぼる。
いわゆる「町中華」を営む両親の元に生まれた。両親は忙しく、幼少期は近所に住む祖父母の家に預けられていた。本が好きな子どもで、祖父母宅では本を読んで過ごした。父はその後、店を閉めて英語塾を始め、母はアマチュアのボディビルダーになったが、両親ともふしみさんに何かを押し付けることがない、自由な家庭だった。
外国に行きたいという気持ちから、大学は外国語学部へ。何語でもよかったが、唯一合格できたフランス文学科に進学し、1年間フランスに留学。卒業後は、好きな絵本に関わる仕事がしたく、洋書の絵本の卸会社に就職した。けれども、〝空気の読み方〟を知らないふしみさんに会社勤めは合わず、フリーランスになることを決意。卸会社時代に集めた絵本を出版社に持ち込み、絵本の翻訳者としてデビューした。
「器用じゃないので、本当に気に入った本以外は、あえて引き受けないようにしています。でも、それで済んでいるからラッキーですよね。私はキャリアの初めは実家に住んでいたし、自分の努力だけじゃない部分も大きかったと思います」
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