(c)落合由利子
子どもが見ている前で配偶者に暴力をふるう心理的虐待「面前DV」。その面前DVが子どもに与える影響を、膨大な研究と事例にもとづき明らかにした『DVにさらされる子どもたち』(L・バンクロフトほか著、金剛出版)が今年、復刊された。 翻訳を手掛けたのは、翻訳家の幾島幸子さん。40年以上にわたる訳業の中で、子どもの本や、フェミニズムの本、社会評論などを数多く翻訳してきた。
高校時代、AFSという民間団体の留学プログラムに応募し、1968年から1年間、米カリフォルニア州の家庭にホームステイした。ホストマザーはリベラルなフェミニストで、専業主婦として子育てをした後、大学院に通い、カリフォルニア大学の政治学の教授にまでなった人だった。自分の母親と同じ29年生まれの彼女に出会い、幾島さんは「人生が変わった」と思うほどの影響を受ける。
「私の母は、専業主婦で、娘の成績は気にしたけれど、自立して生きなさいという明確なメッセージはなかったんですね。常に外に目を向け、政治から女性の生き方まで自分の考えをはっきり持っているホストマザーの存在は新鮮な驚きでした」 留学後は、日本で大学に進学。サークルの先輩と学生結婚し、1年間バックパッカーとしてヨーロッパを旅行した。ふたりともノンポリだったが、当時は学園紛争の時代。既成のものではない生き方を模索していた。両親はもちろん大反対。「まあ、大変ですよね。母が泣き喚く中、私は家を出たというか」
帰国後、大学を卒業してからは、学生時代からしていた翻訳のアルバイトを再開する。パートナーが学習塾を始めると、幾島さんも一緒に働くように。子どもも生まれるが、夫婦仲がうまくいかなくなり、家を出た。
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