(c)柏原登希子
「この問題は、過去の問題ではありません。優生保護法がばらまいて根付かせた優生思想に基づく差別が、今も続いています。これは私たちがこれからどういう社会にしていくかが問われている問題なのです」
今年3月23日、厚生労働省前で力強くスピーチしていたのは、宮城県仙台市で旧優生保護法訴訟の支援などを行う、大学生を中心とする「強制不妊訴訟 不当判決にともに立ち向かうプロジェクト」(以下、プロジェクト)メンバーの池澤美月さん。
旧優生保護法の下で障害などを理由に強制的に不妊手術を施されたとして、被害者らが国に損害賠償を求めていた東京の控訴審で、今年2月の大阪高裁に続き、国の賠償責任を認める判決が出された(本紙4月5日号)。この日、全国の原告や支援者らが厚労省前で国に上告しないよう訴えていた。池澤さんたちは、国に上告しないよう求める緊急ネット署名を大阪・東京両判決後にそれぞれ立ち上げ、集まった約2万筆の署名を、前日に東京訴訟原告と共に厚労省担当官に手渡した(国は両訴訟とも上告)。 「命がけで闘う原告の方とともに、私たちも優生思想を根絶するために行動していきます」と池澤さんは締めくくった。
高校生の時に、親と暮らせない子どものドラマや不登校の子が主人公の小説の影響で、子どもの貧困や育ちの問題に興味を持ち、子どもたちが安心して育つことのできる社会作りを志して大学に進学。さまざまな社会問題を学ぶサークルに入った。 そこで出会ったのが旧優生保護法下での強制不妊手術問題。入って翌月の2019年5月、仙台訴訟の地裁判決が言い渡された。判決では、旧優生保護法が憲法に違反していると認めた一方、「除斥期間」を理由に原告の損害賠償請求を棄却した。
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