(c)落合由利子
昨年8月6日夜、東京都世田谷を走っていた小田急線の車内で、大学生の女性が見ず知らずの男性に、刃物で刺された。他の乗客も刺され、10人が重軽傷を負った。加害男性は「6年ほど前から、幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」と供述したという。 この事件を、「女性」であることを理由にした殺人、「フェミサイド」未遂事件と名付け、その実態解明と対策・予防啓発を求める署名を立ち上げたのが、「フェミサイドのない日本を実現する会」発起人で、大学生の皆本夏樹さんだ。
事件の翌日、東京にあるフェミニスト・ブックショップの店内に、事件のことと「フェミサイド」のことが書いてあった。「家に帰って自分でいろいろ調べるうちに、これはただの無差別事件じゃない。背景にミソジニー(女性憎悪)があり、性別を理由にした暴力だということを、フェミサイドと名付けることで可視化しなければと思いました。DVもDVという言葉ができて初めて実態が明らかになり、対策が講じられました」
2012年、世界保健機関(WHO)の報告書にフェミサイドが記され、近年国連でも対策や監視が呼びかけられているほか、フランス(本紙20年7月15日号)やメキシコなど、社会問題となっている国もある。
皆本さんは、これまでSNSで女性差別のことなどを発信してはいたが、「自分の知っている人たちに守られた空間の中でやっていてもどうしようもない。何か行動しなきゃいけないと思ったんです」
最初に思いついたのが、韓国で16年に起こった、女性嫌悪を抱く男性が面識のない女性を殺害した「江南駅殺人事件」だ。「彼女は私だったかもしれない」と感じた多くの女性たちが、殺害現場に付箋でメッセージを貼った。事件から2日後、皆本さんは、犯行場所近くの駅構内の何カ所かにメッセージを書いて貼った。 #StopFemicides #幸せそうという理由で私たちを殺さないで
続きは本紙で...