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インタビュー

金沢21世紀美術館に出品中の現代美術家

百瀬文さん

  • 2022.2.5
  • 聞き手…中村富美子
  • 撮影…落合由利子

百瀬文さん

(c)落合由利子

芸術を信じ、新しい家族を生きる

 

いま石川県・金沢21世紀美術館で「フェミニズムズ/Feminisms」展が開かれている(~3月13日)。複数性で語られるフェミニズムの表現が並ぶ最後に、最も若く新しい動向として展示されているのが、百瀬文さんと遠藤麻衣さんが共同制作した映像作品《Love Condition》だ。  映像の中の2人は理想の性器についておしゃべりしながら粘土を捏ねる。そこから立ち上がる不思議な形。その造形が逆に、男女の二元論を支えてきた性器への意識も変えていく。

 

 百瀬さんは一貫して、認識の枠組みを揺さぶる映像作品を作り続けてきた。  「芸術とは、自分が信じていたものが壊れる経験でもあります」  社会規範や、身体に内在化された権力構造、固定的な自己同一性…私たちを縛る幾重もの枠や境界をフィクションによって意識化させ、知的に身体的に、観る者を揺さぶる。  《Social Dance》では、ろう者の女性が聴者の恋人と手話で言い争う。次第に感情が高ぶり、彼は彼女の手をむんずと掴む。手話を翻訳する字幕もブツッと切れる。他者の「声」を奪う暴力が、露わになる。

 

 「作品の受け取り方は個人の体験によって違うようです。見ながら泣き出す女性もいました。男性は責められているように感じたり。でも、女性を被害者として描いたつもりはありません。女性である私も、文脈が変われば、ああしたことをやっているのかもしれない。場合によっては日本のパスポートがあるだけで特権的であるように。それを問い直すために、比喩として表現した作品です。男と女、聴者とろう者という単純な形で意味づけはしたくない」

 

この作品に限らず、手や口の独特の表現力も目を引く。  「手は物を指したり手話をしたり、意味を発信する場であり、触れあって交感する場でもあります。言葉を発する口も、相手を性的に取り込む場にもなる。ともに、意味と肉体で他者と交感する場所だと思います」

        続きは本紙で...


ももせ あや

1988年、東京都生まれ。現代美術家。《聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと》(2013)はじめ、《Social Dance》(19)、《Jokanaan》(19)、《Born to Die》(20)、《Flos Pavonis》(21)等の映像作品を国内外で制作・発表。今春より「群像」にエッセイを連載。

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