(c)石田郁子
劇作家の石原燃さんが書く、性暴力サバイバーの男性を主人公にした『蘇る魚たち』が昨年12月に上演され、役者たちのセリフの掛け合いに引き込まれた。そしてこの3月、中絶と中絶薬をめぐるシスターフッドを描く『彼女たちの断片』が上演される。 石原さんの戯曲は時代を見据える視点が鋭い。元「慰安婦」を回想する一人芝居や、NHKの番組改ざん問題もテーマにしている。 『蘇る魚たち』は、子ども時代に父親から性虐待を受けていた兄弟たちの葛藤や戸惑い、告発と、彼らがエンパワーし合うことを描いた作品だ。
世界保健帰機関(WHO)が必須医薬品に指定し、海外では薬局などでも比較的安価に手に入る経口中絶薬の申請と承認について、今、女性たちに期待と不安が広がっている。昨年末、英国の製薬会社が厚労省に申請した。ところが承認にはこれまでの中絶手術と同様に高額で、入院等の条件が付く懸念がある(本紙2021年11月25日号)。このタイミングで上演されるのが『彼女たちの断片』だ。
「19年に安全な中絶方法を求める運動をする女性たちの話を聞いたり、読んだりしていました。同年に始まったフラワーデモに参加したこともあり、フェミニズムの視点から中絶を考えることに興味を持ち、いずれこのテーマで戯曲を書いてみたいと考えていたところに、劇団の『東京演劇アンサンブル』から戯曲の依頼があったのです。テーマは私が決めていいということだったので、中絶薬を使う一夜を書くことにしました」
登場人物は7人の女性。20歳の学生・多部真紀が妊娠し、友人に助けられながら、経口中絶薬を使った中絶を選択した。中絶後進国(日本はまさにそれ!)の女性の安全な中絶のために薬を提供する国際的団体(実在)があり、それを利用する。
続きは本紙で...