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インタビュー

映画『手紙』(作・出演)に半生を込めた

金恵玲さん

  • 2021.11.15
  • 聞き手…中村富美子
  • 撮影…落合由利子

金恵玲さん

(c)落合由利子

朝鮮籍という矛盾とともに生きる

 

舞台俳優の金恵玲さんは在日3世として日本に生まれ育ち、ずっとこの名で生きてきた。  「お前という人間は一人。だから名前も一つ、と父は考え通名を作らなかった。この名で社会の矛盾や理不尽に直面してきたから、今ある自分になれた」  何度も疎外され続け、祖父母がいつか帰りたいと願った故郷への思いを募らせてもきた。そこには北も南もない。しかし韓国の男性との交際を機に、その故郷も失われつつある。

 

 伝統音楽の奏者である彼とは10年ほど前の来日公演で出会った。朝鮮籍の恵玲さんには旅券がなく、韓国に行くには韓国領事館が発行する旅行証明書が要る。しかし李明博政権以降、発行許可はほとんど下りず、忙しい彼の来日も難しく、なかなか合えない日々が続いた。だから進歩政党である文在寅政権の誕生が、どれほど嬉しかったか。  早々に旅行証明書を申請すると、家族や彼の詳細な個人情報を求められ、拒むと「国家への反逆思想があるのか!」と恫喝された。怖かった。

 

 「在日の歴史を知っているのに、なぜ」。結局、彼に会うためには応じるしかなく、非力を痛感し、憧れの故郷は胸の中で色あせた。  それでも2018年、韓国に渡り、家族や友人に温かく迎えられ、結婚式を挙げた。結婚で身分も安定し、すべてがうまくいく。と、思っていた。  ところが自分たちは国際結婚にあたり、韓国で婚姻届を出すには、国が発行する独身証明書が必要と知る。国をもたない恵玲さんにはなす術もない。

「祖父母の戸籍が韓国に残っていたので、そこに両親と自分を記載できれば国際結婚にならず、婚姻届だけで済むかも」。 そう考えて役所に相談すると、必要書類を揃えれば可能だと教えられた。すべて整え再訪すると、今度は「法律が変わり裁判所の許可が必要」と言う。その裁判所では「前例がなく、わからない。法律の担当者と相談します」とあしらわれた。

        続きは本紙で...


キム ヘリョン

1982年、東京都生まれ。俳優、通訳。2021年、自身の半生を込めた映画『手紙』(撮影:木内裕子、演出:金世一、金恵玲)を製作。9月に新宿トーテムポールフォトギャラリーで初公開。今後も上映活動を目指す。問合せはkimhr5963@gmail.comまで。

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