(c)宇井眞紀子
東京新聞夕刊の連載コラム「炎上考」がおもしろい。水着女性が登場する飲み物のCMや、養殖ウナギを女性に擬人化した自治体のPR動画などに対し、〝時代遅れ〟〝幼児への性虐待を喚起する〟と、ジェンダー視点から鋭く切り込む。巷にあふれる表象を読み解いているのは、美術史・ジェンダー史研究者の吉良智子さんだ。
両親と弟、父方の祖父母がいる家庭で育つ。「10代の頃は本音が出せず苦しかった」と話す。常に祖母の顔色をうかがっている専業主婦の母親からはよく愚痴を聞かされていた。 「母の立場を悪くしないよう〝いい子〟でいました。母のような人生になるのだろうと漠然と思っていたのですが、大学の授業で、女性が生きづらいのは男性中心の社会構造のせいとわかって、希望がわきました」
幼い頃から絵を描くのも見るのも好きで、広く文化現象を学ぶ文化学科で学ぶ。授業で「なぜ女性の大芸術家は現れないのか?」という海外の論文を読み「これも社会構造の問題だった」と腑に落ちた。
「明治時代に西洋のアートが入って、〝見る主体の男性と見られる客体の女性〟という枠組みが強化されました。先行研究によれば、女子の美術教育の場は民間に限られ、良妻賢母主義に基づいた、趣味や子どもの教育に必要な教養が目的。中流階級の女性は、女の裸を描く西洋画はだめでも花嫁修業で日本画を学ぶのは許されていました。父が私を日展などの展覧会に連れていってくれたのも、教養を身につけさせたかったから(笑)」
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