(c)谷口紀子
東京オリンピックが止まらない。新型コロナの感染が拡大し、医療現場は逼迫。一時は世論の8割が開催に反対し、海外メディアからも批判が出る。 「五輪の“平和と友好の国際的集い”というブランドがズタズタになっています。国際オリンピック委員会(IOC)と五輪へのこれほどの批判を見たことがありません」と話すのは、スポーツとジェンダー、セクシュアリティを研究し、今年3月に出版された、ヘレン・ジェファーソン・レンスキー著『オリンピックという名の虚構』(晃洋書房)の監訳者の一人、井谷聡子さん。五輪に伴う開発・再開発を含めた巨額の「オリンピック産業」の実態、社会で周縁化された人々の排除と弾圧、五輪組織の腐敗、選手への抑圧、性別確認検査に見られる人種差別や女性差別などを明らかにした本だ。
「五輪が始まればメディアはメダル報道一色になる。 “スポーツウォッシング”や“スポーツは大衆のアヘン”という研究者の言葉があるように、利権に都合のいいスペクタクルを見せられて、高揚感に乗せられ、貧困や格差など社会の大事な問題から目をそらされます。『復興五輪』もそう。本当に怖いのは、日本のこの後、です」
子どもの頃から運動が得意だった。小学4年生で地域のサッカークラブに入った。男女合わせて学年で1、2位を争う足の速さだった井谷さんだが、学年で1人の女子メンバーである井谷さんに、男性コーチは一切指導をしなかった。「傷つきましたね。運動ができたつもりなのに、必要とされなくて」。興味を失ってやめ、バレーボールに。中学からは陸上を始めた。
続きは本紙で...