(c)谷口紀子
韓国KBSが昨秋製作した、コロナ禍の日本の非正規労働者の闘いを描くドキュメンタリーを見た。青いキャップ、オレンジの雨がっぱという目立つ姿で、大阪市に医療現場での差別を訴える女性が印象に残った。その人が大西ゆみさんだった。
昨年4月14日、松井大阪市長が突然「十三市民病院をコロナ専門病院にする」と発表。入院患者を転退院させるなど病院は大混乱。3日後、市長は十三病院の医師と看護師に特別手当を出すと発言。だが大西さんたち非正規職員は対象から外れた。市長は医療用ガウンが足りないからと雨がっぱの寄付も呼びかける。かっぱは医師や看護師以外の人たちに配られると聞いた大西さんは「これは差別だ」と憤慨した。
5月11日、大西さんはかっぱを着て、コロナ禍で仕事を失った人々と市役所に抗議に行った。「かっぱでは感染は防げません」「かっぱで仕事をさせないでください」と叫ぶ大西さんと、「何もないよりましです!」と言い放ち、立ち去った松井市長の姿が映像に残っている。
大西さんは、男尊女卑などの日本社会に嫌気がさして脱出。2016年に家族の介護で大阪に戻るまでの32年間、イギリスで生活した。 「移民局で英語がわからず〝え~なに?〟ゆうてたら、〝耳が聞こえんの?〟って同情されたんか、なぜかすぐに無期限ビザが取れたんです」 ビザ取得後はロンドンの富士銀行(当時)の支店に就職。9・11で支店が閉鎖され退職。途方に暮れた。友人から看護師になるなら奨学金をもらって学校に行けるよと聞き、一緒に受験。3年間大学で勉強し、卒業後は精神科の看護師として10年以上働いた。帰国後、英国の看護師資格が使えず、医療関連企業の非正規職に就く。十三市民病院では、医療関連請負会社「サクラヘルスケアサポート」(以下、サクラ)の契約スタッフとして、手術器具等の滅菌・管理などを請け負っていた。
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