(c)江里口暁子
「またか」。性犯罪の報道を見聞きするたび、真っ先に感じるのは無力感だ。なぜこうも性犯罪は繰り返されるのか。心理の専門家として性犯罪の再犯防止教育に関わり、加害者のカウンセリングにも取り組んできた藤岡淳子さんに話を聞いた。
藤岡さんが性犯罪者と関わるようになったのは約40年前。法務省に勤め、鑑別所や少年院、刑務所で「加害者」たちと出会った。 「もともと教育に関心があったので、加害行動をどうすれば変えられるかというところに携わりたいと思っていました。性犯罪のグループを担当することになったのはたまたまですが」
世の中にこれほど性犯罪が多いのかと驚いた。同時に「性犯罪」「加害者」に対するイメージと現実とのギャップも知る。報道では「モンスターのような人間が起こす、特殊な事件」というイメージが強調される。「でも実際は私たちの身の回りに性犯罪はあふれています。表には出ませんが家庭内での夫による妻へのレイプ、父や年長のきょうだい、親類から女児への性加害もたくさんあります」
加害者たちは高い教育を受け、社会的地位のあることも多い。安定した生活を守るため、社会に向けて破壊的な行動はしない。見つかりにくい盗撮やのぞき、痴漢を繰り返していたのがエスカレートして逮捕に至り、周囲を驚かせるというパターンが典型的だ。 法務省退職後、藤岡さんは性犯罪をテーマにした本を出版し、取材を受ける機会も増えた。本や新聞記事を読み、「息子が逮捕された」「性犯罪を繰り返す」と悩む母親たちから相談やカウンセリングの依頼がくるように。「ちょうど大学へ移ったタイミングでした。助けを求められたのならとボランティアで引き受けたのが始まりです」
続きは本紙で...