(c)落合由利子
「医療者は極限状態です。国は責任をもってください」
昨年12月、千葉県の船橋二和病院の看護師・医師8人(うち女性7人)の小さな労働組合が、医療者・介護者への支援を求め、厚生労働省に向かった。労働組合はこの日、大幅削減の冬の賞与の改善と人員増員などを病院に要求し、2回目のストライキを行っていた。「スト決行中」と書かれたゼッケンをつけ、白衣で街を歩き電車に乗る組合員に人々が目をとめる。看護師で執行委員長の飯田江美さんの声が厚労省前に響いた。
最初のストは7月。病院が病棟の建て替えとコロナによる減収を理由に、過去最低の賞与を提示したことなどに抗議した。 「減収の補填になぜ労働者の賃金が削られるのでしょう。医療者の労働がきちんと守られないと、医療水準も上がらず、患者も必要な医療を受けられなくなる。患者さんの命と権利を守るためにも闘おうと思いました。でもスト当日、私はヘルニアの手術で参加できず、仲間ががんばってくれました」
白衣を着て「ストライキ決行中」と横断幕を掲げる組合員の姿は目立ち、テレビや新聞で報道され、話題になった。 「私たちの訴えは、医療を社会保障として取り戻すこと。政府が国家財政の危機をあおり、医療費を削減したしわ寄せで、医療現場は人件費が抑制され、人員不足はすでに慢性化。コロナで状況は、より悪化したのです。前回のストは多くの人から共感を得られたので、12月もやると決意しました」
高校卒業後は自立のために家を出た。就職した職場の労働環境が過酷で将来に希望がみえないと感じ始めた頃、看護師不足の問題を知った。看護師がきつい・汚いなど〝4K〟〝8K〟と言われる一方で、〝白衣の天使〟と持ち上げられることに腹を立て、看護師が我慢を強いられている状況を自分が変えたいと、看護の道へ。一人暮らしでお金がなく、奨学金で看護学校に入れることもありがたかった。
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