(c)石田郁子
10年近く前、看護師としてイラクやシリアなどで難民の医療支援を行っていた国井真波さんの講演を聞いたことがあった。現在は東京・新宿で路上生活する人々を見回ったり、品川の東京入管に収容されている外国人に医療支援を行っているという。どんな支援活動をしているのか、話を聞いた。
エジプトで発掘をしたい!という考古学への夢を抱いて大学に入ったが、大学1年目で大きな転機を迎えた。 「友だちとタイを旅行して、人身売買や、女の子や男の子が性産業で働く現場を目の当たりにして。その現実を知ってしまった以上、もう見ないふりはできません。もっと広く社会のことを知りたいとバックパックで世界を回りました。そして在学中に『国境なき医師団・日本』の学生ボランティアグループに加わったことから、看護師志望に方向転換しました」
卒業後、日赤の看護学校へ。志どおり、看護師として海外での活動を始めた。チェルノブイリ原発事故の影響が残るウクライナやベラルーシなどへ、海外支援NGOで数多くの経験を積んだ。
「20代の頃は海外で医療にアクセスしづらい人に医療を届けることだけを考えていました。ところが『日本で医療にアクセスが困難な人たち』はどうしているのか? 関心が高まり、日本の路上生活者の問題に気付きました」。いろいろな団体に関わって支援を模索していた時に出会ったある医師の、「日本の路上生活者は世界の難民の縮図」という言葉が国井さんのモチベーションをさらに高めた。 「世界でも日本でも、社会の周縁にいる人たちは同じように社会システムからこぼれ落ちている、という意味に捉え、日本で困難の中にいる人のために活動したいと思いました」
続きは本紙で...