(c)落合由利子
この春から、ドキュメンタリー映画『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』が公開されている。主人公は坂本菜の花さん。石川県生まれ。2015年、15歳で親元を離れ、沖縄県那覇市にあるフリースクール「珊瑚舎スコーレ」高等部に入学し、18年まで3年間を沖縄で過ごした。映画では、菜の花さんがそこで人と出会い、沖縄の戦争や米軍基地について知ったことを“自分事”として考えていく日々が描かれる。 その菜の花さんを撮ったのが、沖縄テレビのアナウンサーでディレクターの平良いずみさん。菜の花さんの魅力を「人の話を全身で受け止め、自分だったら何ができるか考えて行動に移す。希有な存在です」と語る。
菜の花さんは19年、沖縄で過ごした日々を綴った、エッセイ集『菜の花の沖縄日記』を出版した。沖縄に住んでいる間に書いた、地元石川県の地方紙での連載コラムをまとめたものだ。みずみずしい感性で沖縄の社会、文化を取り上げて大きな反響を得た。
平良さんが菜の花さんに出会ったのは、15年、珊瑚舎の夜間中学校を取材していた際のこと。戦後70年の節目に、戦争をどんな視点から描けば見る人の胸にすとんと落ちるのか、思案していた時だった。戦争で学校に通えず、ようやくここの夜間中学に通って文字を獲得したおじいやおばあに焦点をあてて伝えようと決め、番組を作った。 「その人たちが卒業したとき、菜の花さんが入学してきたんです。掲示板に新聞連載のコラムが貼られていて、言語感覚の鋭いすごい子が入ってきたなって思いました」 カメラは、菜の花さんが夜間中学のおじい・おばあを助け、三線やウチナーグチを学ぶ様子を丁寧に追う。米軍ヘリが墜ちた高江に赴き初対面の住民の女性と話し込み、米軍属に殺された女性の追悼と米軍への抗議集会に参加した姿も写す。
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