(c)落合由利子
昨年12月11日、東京で行われた「フラワーデモ」で、中学教員からうけた性被害体験を語る女性がいた。被害による長年の生きづらさを抑えた声で語り、「子どもへの性犯罪の時効を撤廃してほしい」と訴える姿に胸を突かれ、すぐに声をかけた。その人が石田郁子さんだった。
石田さんは15歳から19歳にかけて、通っていた北海道・札幌の市立中学の美術教員から、卒業後も性被害に遭い続けた。昨年、加害者と札幌市に対して損害賠償を求め、東京で提訴。デモの翌日が控訴審の第1回期日で、傍聴を呼びかけるためデモで語ったのだと話してくれた。 子ども時代に負った性被害は、まず何が起きたのか理解できず、そして事の重さに耐えきれずに被害は記憶の底に沈み、大人になってから初めて被害に気づくことが多いと言われている。石田さんも被害を認識できたのは37歳の時。社会勉強のつもりで傍聴した児童福祉法違反の刑事裁判が、自分の体験と酷似していた…。そしてPTSDを発症した。
被害に気づいてから振り返ると、教員とは支配・被支配の関係の中にあった。まだ誰とも付き合った経験もない頃のこと、教員からは恋愛だと思い込まされていたけれど、自分の意思を尊重されたことはない。
当時、それが暴力とは気づいていなかったとはいえ、「先生や大人の言うことはきくもの」と固く信じていた石田さんにとって、この長期に渡る被害は心身に混乱をもたらした。衝動的行動や性的に危険な行動をとったり、自分を大事にすることがわからない。「まともな感覚が身についていなかった」 被害に気づいた後、石田さんは教員に会っている。そこであっさりと謝られた。恋愛だと思い込まされていたけれど、やはり違ったのかと確信した。
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