(c)宇井眞紀子
甚大な被害があった昨年秋の台風のあと、災害や防災教育などを取材しているスベンドリニ・カクチさんに会った。カクチさんは、英国・ロンドンにある通信社の特派員で、スリランカ人のジャーナリスト。日本に住んで30年以上になる。
「避難訓練などがあり、他国に比べて防災教育のレベルが高い日本で、また被災者が大勢出てしまったのは悲しい」とカクチさんは言った。 「被災者は自分たちの土地の危険性を知っていたのでしょうか。1995年の阪神・淡路大震災後から個人の防災意識は高くなりましたが、本来危険な土地にビルや家が建っていたのなら、その責任を問わなくてはいけない。土地の歴史や行政の危機管理など被害の原因や、千葉の大停電の原因となった電柱をどうするかなどの議論が起きてもいい。私は被害の検証を促す記事を発信しましたが、日本のテレビでは被害状況は詳しく報じても、どこも一過性で内容が同じ。防災意識を喚起するだけでなく、多角的な視点で防災を論じる番組が必要と思います」
台風時には地震も起きた。外国人はさぞ恐怖だったろう。日本語がわからない外国人への避難誘導はきちんとされていたのだろうか。ある市では、外国語の防災情報に「川に避難を」と読める内容の誤訳があったと知った。誤った情報は人々を危険にさらす。 「情報提供は評価します。外国人と一緒に情報を伝えればよかったのです。私たち外国人の願いは日本人と同等に人権を守ってほしいということ。外国からの観光客も労働者も増えている状況で、外国人への情報伝達も課題かもしれません」
防災教育は評価しつつ、グローバルな視点も大切という。 「災害を地球温暖化や山林の状態など環境との関係で考える観点は教育にも必要です。国も防災へのビジョンを示し予算をつけてほしいですよね」
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