(c)落合由利子
たった3日で中止になった「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後(不自由展)」(閉幕1週間前の10月8日に再開)。不自由展実行委員として、中止を決めたトリエンナーレ実行委員会(会長は大村秀章愛知県知事、芸術監督は津田大介さん)やメディアへの対応に目の回る忙しさだった岡本有佳さん(9月5日号2面)に話を聞くと、ポンポンと言葉が飛び出した。
「トリエンナーレ実行委員会に対して仮処分までやって勝ち取った再開だったけれど、ものすごく複雑な心境」と言う。「和解のため仕方なく妥協して入場規制を認めるなど、観客や不自由展の出展作家たちにも申し訳なかった」。だが、会場は鑑賞者同士や作品と鑑賞者が交流する「場」になった。「平和の少女像」を見て「こんなのうそだ!」と言う人に、「静かに芸術作品を見ましょうよ」と制する声が鑑賞者から上がったという。
そもそも「不自由展」は有佳さんと仲間が、2015年に東京都内で開催した「表現の不自由展 消されたものたち」が元になっている。日本軍「慰安婦」や「天皇と戦争」を表現した作品が展覧会などから撤去・拒絶されたことに抗議して企画した。期間中、右翼や歴史修正主義者の攻撃に遭うが、仲間と対策を講じて成功させた。 その展覧会を見ていたのが芸術監督の津田さんで、「その後を含む不自由展をぜひトリエンナーレに出展してほしい」と依頼してきた。
今回の中止の表向きの理由は「セキュリティー」だった。だが、15年の展覧会成功の実績がある不自由展実行委員は、当初から妨害があるのは必至と考え、トリエンナーレ側に対策方法を提案していたが、実際は対策が取られていないことがいくつもあった。 中止を決めたのは大村知事と津田芸術監督。作家に事前通達せず、契約主体である不自由展実行委との協議もしなかった。
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