(c)飯田典子
1年前「メディアで働く女性ネットワーク」は誕生した。その少し前に起きた福田財務次官(当時)によるテレビ朝日女性記者へのセクシュアル・ハラスメント。麻生財務大臣の「男を財務省担当にすればいい」など耳を疑う発言が続いた。
「看過できなかった。セクハラをなくそうという方向に世の中が動かなかったことに危機感を持ちました」と団体を立ち上げた一人、林美子さん。顔を出しにくい現役記者の仲間たちに代わって代表世話人になった。現在、メンバーは45社、120人強。社会への働きかけを行う報道現場で女性の尊厳が守られないと、報道の自由が脅かされ、女性差別や人権侵害もなくならないと話す。
「メディアでもセクハラってあるんですか? と驚かれますが、被害に遭ったことのない人はほとんどいないと思います」。酒の席で触ろうとする男性からは「減るものでなし」と。
「減るんです、自尊心が。がまんしやり過ごすのが賢い対応だと言われ、女性もそうしなければ生き抜くことができなかったけれど、モノ扱いされて平気なはずはない」 問題意識を強く持ち始めたのは2014年、アダルトビデオに出演を強いられた女性たちの存在を知ったこと。深刻な被害の実態に加え、ジェンダーやセクシュアリティーの問題が報道されにくいと疑問を持つ。エイズ撲滅の募金をするとAV女優の胸をさわれる「おっぱい募金」の放送をテーマに原稿を書いたが、ついに掲載されなかった。「書きたいことを書けない」―早期退職の理由の一つになった。
「震災で見過ごされてきた性暴力について書きたくて連載を企画し、22回のうち最後の5回は性暴力をテーマにしました。でも仲間の記者の渾身の記事が大幅に書き換えさせられ、私は退職直前でしたが、周囲に響き渡る大声で激怒しました」
続きは本紙で...