(c)清水さつき
がんの治療成績は向上していても、治療の迷いや再発の不安はある。が、病院の外来診察ではなかなか悩みを話せない―。東京・豊洲にある「マギーズ東京」は、がんの悩みを抱える人が、ふと立ち寄れる施設(詳細は4面)。共同代表理事でセンター長を務めるのが秋山正子さん。「暮らしの保健室」(本紙2014年9月15日号で紹介)の開設者として知る読者も多いかもしれない。草花が芽吹く庭、明るく落ち着ける建物の中で話を聞いた。
秋山さんが「マギーズ」に出合ったのは2008年、日本で行われた国際がん看護学会の時。同じ登壇者にイギリス「マギーズ・エジンバラ」のセンター長がいた。マギーズががんとともに生きる人のための施設であり、相談は無料、予約も不要、家のような雰囲気の場所で来訪者が悩みを整理できる場所と知り、感銘を受けた。
「質疑応答で手を挙げ、〝私がすごい大金持ちだったらすぐにでも建てたいです!〟って真顔で言ったんです。会場からどっと笑いが起きました」
すてきな施設だが、所詮遠い外国の夢物語…と思った人が大半だったのかもしれない。なぜなら、「マギーズ」を名乗るには資金もさることながら、ケアの質、建物の規制、英国本部での研修など厳しい条件があり、非営利組織のため資金はチャリティ(寄付)で集めるなど、高いハードルがあるからだ。
秋山さんは真剣だった。この日から「いつか日本でマギーズを」とあちこちで話し始め、09年には仲間と英国の本部やエジンバラを訪問し、翌年には日本で招聘講演会を開く。そして11年、マギーズをモデルに、誰もが病気・介護や生活の悩みを気軽に相談できる「暮らしの保健室」を新宿区に開設した。
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