(c)江里口暁子
大阪で弁護士として働く仲岡しゅんさんの事務所には相談が絶えない。多くはDVや離婚、借金問題などに悩む女性たちだ。仲岡さんと同じトランスジェンダーの人も少なくない。
人は生まれる環境や肌の色、性的指向などを選べない。にも関わらず、まさに「そこ」で差別や排除をされる。仲岡さんは幼少期、アトピー性皮膚炎だった肌を「汚い」と言われ、「自分は汚いんだ」と思い込んだ。思春期を迎えると、自分の心身に対する違和感がふくらむ。
「男子たちは女の子に興味をもってるのに自分にはまったくない。だから最初は自分をゲイなのかなと思いました」 さらに大きかったのは、声変わりしたりひげが生えてきたりする自分の体への嫌悪感である。自分は何者なのか? 何ともいえない居心地の悪さを胸のうちに抱えながら成長した。 弁護士を志すようになったのは、大学時代の出会いが大きい。人権問題を研究するサークルや障害のある人たちが集まる場、外国人の集まる日本語教室…。社会的少数者―マイノリティーへと追いやられてきた人たちの現状を知るとともに、「私らの味方になれる弁護士になって」と声をかけられた。
仲岡さん自身もマイノリティーとなった。「男性」から「女性」へとトランスし、戸籍上は男性のまま、社会的には女性として生活することを選んだのである。 「当時は〝ニューハーフ〟と呼ばれ、今以上に就ける仕事が極端に限られていました。生きていくことを考えた時、〝揺るぎない〟ものが欲しかった。そこで〝弁護士なら〟と考えました」
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