(c)落合由利子
「フタバスズキリュウ」をご存じだろうか。ドラえもんの映画にも登場し、名前を聞いたことがある人もいるだろう。 フタバスズキリュウは、1968年に福島県いわき市の白亜紀後期(約8500万年前)の地層から日本で初めて化石が発見された、海生爬虫類の一つである首長竜。発見以降、日本でも恐竜の化石が見つかるかもしれないとの機運が高まり、実際次々に恐竜や首長竜の化石が発掘され始めた。体長約7㍍、ぬーっと伸びた長い首に圧倒される。これが福島県辺りを悠々と泳いでいたなんて!
このフタバスズキリュウが新種新属の首長竜であると2006年に学術界で正式に名付け、位置づけたのが、世界的な首長竜研究者、古生物学者の佐藤たまきさんだ。フタバスズキリュウ発見から50年の昨年には、『フタバスズキリュウ もうひとつの物語』(ブックマン社)を上梓した。子ども時代のことから、平坦ではなかった研究生活、フタバスズキリュウが新種であると確信するまでの地道な作業と探求の日々が描かれている。本書を貫くのは、子どもの頃から変わらぬ、佐藤さんの“恐竜”への情熱だ。
幼稚園の頃から恐竜が好き。女の子はリカちゃん人形、男の子はミニカーで遊ぶ中、恐竜のフィギュアや恐竜ごっこに興じた。その頃から「恐竜の研究者」になると決めていた。中学・高校時代は文学少女。文学作品を読みあさり、エッセイストや翻訳家に憧れもしたが、「職業は恐竜の研究者」は変わらない。実は佐藤さん、中学受験に失敗したり、理系科目が苦手だったが、夢はぶれなかった。
古生物学を研究できる大学に入学し、卒業論文を書く際に「恐竜はないけど首長竜の標本ならある」と言われてたまたま研究を始めたのが、首長竜との出会いだ。その後、化石爬虫類の研究が盛んな米国、カナダの大学院へと進んだ。「私は標本運がある」と自負する佐藤さんは、次々と首長竜化石に出会い、調査、研究を積んでいく。
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