(c)落合由利子
少年院や刑務所でいま、犬が入所者の社会復帰を手助けしているのをご存じだろうか。 官民協働で新設された刑務所「島根あさひ社会復帰センター」の盲導犬パピー育成プログラム。そして千葉県の八街少年院の保護犬訓練プログラム。 いずれも大塚敦子さんが立ち上げから関わった日本初のプログラムだ。米国の先進事例を20年以上も取材してきた経験が、そこに実っている。
そもそも、大塚さんは報道写真家として出発した。変革に燃えたフィリピン、天安門…。「歴史が動く瞬間に立ち会う高揚感で、紛争地を飛び回っていた」 転機は湾岸戦争だった。クルド難民の女性と知り合うが、30代前半なのに髪が真白。攻撃を逃れる山中で、一晩で白くなったと言う。そのとき気づいた。「これまで事件だけ見て、人を見ていなかった。じっくり人の人生を見る仕事がしたい」
「そんなとき米国のエイズ患者を取材する仕事が舞い込む。誤解や偏見に苦しみ、家族にも見放されて孤独に生きていた患者たち。なかでも29歳で亡くなるジェニーと心が通い、家に泊まり込んで取材することに。
「昨日できたことが今日はできなくなり、誰にぶつけていいかわからない思いで荒れる。そんな彼女にかける言葉が見つからず、いたたまれないこともあった。ところが犬や猫は黙って病床に寄り添い、無条件の愛を示す。動物にしかできないことがあると目を開かれました」
人がより良く生きるのを動物が助ける。米ワシントン州の女子刑務所で行うプリズン・ペット・パートナーシップ・プログラムを知り、その力を確信した。
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