(c)落合由利子
韓流ドラマやK-POPの次は「K-文学」とばかり韓国文学の出版が盛況だ。これを牽引している一人が、斎藤真理子さん。『カステラ』(パク・ミンギュ著共訳 クレイン)で日本翻訳大賞を受賞し、英国ブッカー国際賞受賞の作家ハン・ガンの『ギリシャ語の時間』(晶文社)などを翻訳した。エッセイの執筆や編集の仕事をしながら、1年に5、6冊もの翻訳を手掛ける。
大学2年生だった1980年5月、韓国で光州事件が起きた。民主化運動への弾圧が強ま った隣国のことをもっと知りたいと韓国語サークルに入ったのが、韓国語を習うきっかけだ。 卒業後はフリーランスの出版の仕事に就く。91年から1年半、韓国に語学留学。96年、在日韓国人向けの新聞社に入社し、文化部デスクと特報部記者を1年半務めたが、その後は子育てや他の仕事で忙しく、韓国語から遠ざかっていた。2004年の韓流ブームの時も「実用書などの編集で忙しく韓流では一文も稼げなかった」。 ある日、韓国関連の本の企画を出版社に持ち込んだら「翻訳はできますか?」と言われた。
「提案されたのが翻訳されたものをさらに読みやすくするための編集リライトで、編集者の目で文芸作品として楽しめるように仕上げてほしいという依頼だったので引き受けました」
それが格差社会の若者の貧困をユーモアとペーソスで描いた短編集『カステラ』だ。原文の生き生きとした文体を生かし、15年、ヒョン・ジェフンさんとの共訳で第1回日本翻訳大賞を受賞。実力が買われ、あちこちの出版社から依頼が殺到。「斎藤さんの翻訳だから」と本を買う人も多い人気の翻訳者に。
「韓国関連の仕事はとぎれとぎれだったので、翻訳者になっているのが不思議な感じ。仕事(翻訳)し過ぎると、友人からは〝読むのが追いつかない〟と文句を言われてます(笑)」
続きは本紙で...