(c)落合由利子
フォトジャーナリスト安田菜津紀さんは、内戦が続くシリアから戦火を逃れて隣国ヨルダンで暮らす難民や、フィリピンの路上で生活する子どもたち、カンボジアのHIV感染者が暮らす村の人など、厳しい環境に生きる人々を写してきた。写真にはヨルダンの小学校の校庭を思いっきり駆ける少女たちの笑顔や、地雷がまだ残るカンボジアで、学校の黒板にじっと目をこらして勉強する少女など、子どもたちの日常の姿がある。
「難民問題でも紛争の問題でも、厳しい写真をつきつけるだけだと、興味をもっていない方は、これ以上つらいものは見たくない触れたくないと心のコートを着込んでしまいます。心のコートを脱いでくれる瞬間というのは、『あれ?これなんだろう』と、自然に心が触れたくなる日常の姿だと思うのです」
つらい環境にいる子どもたちが、日本にいる自分と同じように友達と楽しそうに遊んでいたり、家族が大好きなんだと知り、身近な存在と感じてはじめて、彼らが生きる環境にも関心が生まれる。安田さんは、「さあ、これからどういう社会を築きたいか一緒に考えよう」と、関心の種を未来につなげることができるかが、表現者に問われているのだと言う。
安田さんが「伝える仕事」を選んだきっかけの一つは、高校2年生のとき「国境なき子どもたち」(現在はNPO法人)のプログラムで「友情のレポーター」としてカンボジアに行ったこと。小学生のときに両親が離婚し、中学生時代に別れて暮らす父親と兄が相次いで亡くなり、家族とは何だろうと悩んでいた安田さんは、自分と違った環境の子どもたちが家族をどう思っているのかを知りたかった。
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