(c)落合由利子
ある土曜日、神奈川県横浜市で開かれている「わたぼうし教室」を訪ねた。勉強しているのはアジア・南米など外国にルーツを持つ小学生から高校生の子どもたち。先生も外国ルーツや日本人のボランティアの若者たち。教え方は任せている。「何でもありなんです」とにこやかに見守っているのは、教室を主宰する大元麻美さん。
「中華街が近いので、中国人の子どもが多く、繁華街で働くフィリピン人女性たちが呼び寄せた子どもたちも増えています。インターナショナルスクールは高いから公立校に行くのですが、日本語の授業について行けなくて。日本にいれば日本語がわかるようになるというのは乱暴な話で、因数分解なんて説明されても外国ルーツの子にわからないのは当然ですよね」
塾に通う経済的余裕もない。子どもは言葉がわからないだけなのに自分はダメだと思い込む。いじめられ、学校に行かなくなる。「犯罪組織に引き込まれることも多くて」と大元さん。 「言葉の問題は大きいです。家庭でも親は母国語、子どもは日本語、で会話が難しかったり、働きづめのシングルマザーも多く、子どもと話す時間がないことも。言語が未発達だとキレてもなぜそうなったか、どう乗り越えるか思考できない。ひとつの言葉―できれば母語がいいと思うのですが―習得して自分の感情を論理的に伝えられることが大事だと思います」
子どもたちが背負う、荷物の重さ。母親がアジア人、父親が日本人の場合、父が母を見下すことも多い。そんな母を持つことを恥じたり、恥じる自分を責めたりする。
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