サバイバー経験と支援をつないで
東京都内で女性への暴力の被害者支援に関心を持つ女性たちのグループ「エセナ5」が行う連続講座の中で、山本潤さんは毎年、看護師の立場から性暴力被害者に対する緊急避妊ピルや被害の証拠を残す方法など、医療者ができる対応を話してきた。そんな中、2010年の講座で、10代に父親から受けた性虐待を初めて〝告白〟。以来、潤さんは少しずつ自身の体験を話してきている。
一人っ子の潤さんを、母は愛情深く育ててくれた。両親は潤さんが13歳の時に居酒屋を開店。同じ頃、父による性虐待が始まった。半年ほどして、「夜、父が布団に入ってくるので眠れない」と母に訴えたが、まさか父親が娘の体を触っているなどとは想像もつかなかった母は、父に自分の布団に戻るよう注意したにとどまる。一旦中断したが、虐待は7年間続いた。
「当時のことは身体の感覚としては残っているけれど、今はまだ治療中で、感情を伴って思い出せないんです。虐待が再開した時、これはどこの家でも起きている当たり前のことと思い込みました。感情のブレーカーが落ちてしまった感じです」
母が、店を放り出した父と別れることになったとき、母と叔母に父から受けた性虐待を話した。母は大きな衝撃を受けた。1年半ほど抑うつ状態になった母を、潤さんが心配したほどだ。「その頃は自分を守るために解離し、なかったことにしていたんです。でも母が落ち着いたら自分の症状が出てきました」
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やまもと じゅん
1974年、神奈川県生まれ。DV被害女性のためのシェルターで週4日、看護師として働く。SANE養成にも関わる。東京23区を回る予定の「エセナ5」連続講座は、今年度は新宿区で開催。来年1月の医療の講座を担当。安保法案の国会行動にはたびたび1人で参加していた。