おばちゃん発「援助しない技術」
『南国港町おばちゃん信金』という本がある。著者・原康子さんは、アカデミックの世界で「国際支援」を学び、NGOスタッフとしてインドのスラムに暮らす女性たちの支援に取り組む。「貧しくてかわいそうな、でも純朴な人たち」のはずが、そこにいたのは「〝援助慣れ〟した、したたかなおばちゃんたち」だった。生まれ育った岐阜市の方言で、国際支援の現状と課題がわかりやすく語られている。
原さんが所属していた認定NPO法人「ムラのミライ」(旧称はソムニード)は、岐阜県高山市に本部をもつ。南インドのNGOから支援要請を受けたのをきっかけに設立されたこともあり、インドとの関わりが深い。原さんが派遣されたのはインド東海岸にある港町ビシャカパトナムだった。「ムラのミライ」の設立者・和田信明さんにまず言われたのは、「手ぶらでスラムに通いなさい」だった。援助プログラムという「お土産」抜きで現地の人たちと人間関係を築けということだ。
言われた通りにスラムに出かけ、まずは現状をつかもうとした。しかしおばちゃんたちのほうが何枚も上手だった。「仕事や住まいなど通り一遍のことを聞いたら、後の言葉が続かないんです。ぐずぐずしてると〝アンタは何をくれるの?〟と。そして〝手ぶら〟だとわかると、〝忙しいんだからサッサと帰って!〟と邪険にされるんです」
こまごまと働きながら子どもたちを育てる女性たちは、したたかでたくましかった。しかし一方で、朝から晩まで働いても貧しく、社会でも家庭でも男たちが主導権を握り、自尊心は低かった。やがて〝先進国〟から注がれ続ける「支援」にどっぷり依存する、せざるを得ない人々の暮らしが少しずつ見えてきた
続きは本紙で...
はら やすこ
1971年、岐阜県生まれ。現在は夫、7歳の息子とともにネパールで暮らし、フリーランスで「国際協力コンサルタント・コミュニティ開発専門」として働く。著書に『南国港町おばちゃん信金 「支援」って何? “おまけ組”共生コミュニティの創り方』(新評論)。